「積極的な声掛け大切」 いじめをテーマにトークセッション

「積極的な声掛け大切」 いじめをテーマにトークセッション
いじめが深刻化する要因について講演した加藤准教授
【協賛企画】
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 いじめ防止対策推進法が6月で公布から10年を迎える中、千葉大学西千葉キャンバス(千葉市稲毛区)で6月17日、いじめをテーマにしたトークセッションが開かれた。思春期における問題行動やいじめのリスクアセスメントについて研究している北海道大学大学院教育学研究院の加藤弘通准教授が登壇。いじめが深刻化する要因や防ぐために求められる対応について語った。

 加藤准教授はまず、いじめが表れ始める9、10歳は二次的信念が生まれる年齢だと説明。「相手の気持ちが理解できるということは、優しくできるだけではない。どうすれば相手が嫌な気持ちになるか、ダメージを受けるかが分かるということ」とした上で、「先生に相談したら必ず助けてくれたり、良いことをしたらクラスが認める雰囲気があったりすることで良い方向に発達する」と述べた。
 
 また、「いじめは被害が無くなったら終わりではなく、ずっと苦しみ続ける」と話す一方、「起きてしまうのは仕方がないこと。発生してはいけないということを言ってしまうと、発生した時に隠してしまう恐れがある」とし、発生を未然に防ぐよりも、深刻化させないことの重要性を論じた。

 いじめが深刻化する危険因子として、▽教員に相談しているのに解決しない▽被害者と教員の関係が良くない▽仲間外れや無視といった間接的な被害――などを挙げた。加えて、「加害者は教職員から目をかけられていない児童生徒であるケースも多い」とし、励ましの声やポイントを見つけてほめるなどして、関わる頻度を増やしていくことで関係性を築くことが大切とした。

 後半は、匿名報告・相談アプリの開発などを手掛けるスタンドバイの谷山大三郎代表取締役と、こども家庭庁成育局成育基盤企画課指針係の野﨑光寿係長を交えて、パネルディスカッション。参加者の質疑に答える形で議論を深めた。

 「被害者に寄り添うという考え方である以上、『いじめ』という言葉が都合よく解釈されて、『いじめられた』と言った者勝ちという風潮がある」という参加者の質問に対し、加藤准教授は「子供が嫌な思いをしたという事実は受け止めてほしい」とした上で、さらに、「いじめかいじめじゃないかではなく、子供が不満を抱えているのだなと思って接してほしい」とアドバイスを送った。

 さらに、「子供本人が納得したとしても、保護者が了解してくれないケースがある」と問われると、「保護者は怒りを鎮めるきっかけが必要。しかし、児童生徒と違って保護者が教員に関われる時間は限られている。スクールカウンセラーを活用して、第三者的に話を聞いてもらう方法もある」と答えた。

 イベントはNPO法人「企業教育研究会」が設立20周年を記念し開催。教職員や教員を志す学生など62人が参加した。同法人では今年1年を通して、7つのテーマで産官学の第一人者を招いて意見交換する企画を行うことにしており、今回はその3回目。次回は7月15日、STEAM教育をテーマに開かれる。

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