参加者それぞれが考える「未来の教育」 立場を越えて語り合う

参加者それぞれが考える「未来の教育」 立場を越えて語り合う
属人性を高くすることが、教育を変える一歩になると二川主任教諭
【協賛企画】
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 誰もが対等に未来の教育について語る会━━。ベネッセ教育総合研究所教育イノベーションセンターが主催する第2回「未来の教育を考える会」が6月18日、都内のベネッセ東京本部の会場で開催された。教員や教育関係者、保護者ら約250人が参加し、HILLOCK初等部スクールディレクター兼校長の蓑手章吾氏や東京都公立小学校の二川佳祐主任教諭、東京都渋谷区教育委員会の五十嵐俊子教育長らが、それぞれが考える未来の教育をテーマに講演した。

 冒頭、同会を企画したベネッセコーポレーション教育イノベーションセンター研究員の庄子寛之氏は「今日は、『誰もが対等に未来の教育について語る会』だ。立場などさまざまな垣根を取り払い、それぞれが考える未来の教育を語り合ってほしい」とあいさつした。

 HILLOCK初等部スクールディレクター兼校長の蓑手氏は、「計算手」という仕事があったことなどを例に挙げ、「昔は計算ができることがすごく大きな価値だった。しかし、時代とともにそういう価値や生産性は変わっていく。それなのに日本の教育は150年前からほぼ変わっていない」と指摘。新しい教育として外国語やプログラミングが導入されているが、「生成AIの登場などにより、もしかしたら5年後には、英語もプログラミングも必要ないよね、という世の中になっているかもしれない」と説明し、「つまり、価値が変わっていくことは確かだが、どう変わっていくのかは分からない。それならば、今の最前線のことをやっていくことが、一番、未来に近いのではないか。今一番前にある波に乗っていかないと、乗れないまま終わってしまう。それでつらい思いをするのは子どもたちだ」と訴えた。 

 東京都公立小学校の二川主任教諭は「教育と属人性」をテーマに講演し、「教員は『次に担任を持った人が苦労しないように』とか、『誰でも再現できるように』と言われることが多い。教育は組織的に行うものなので、汎用(はんよう)的なのは大事だが、自分にしか生み出せない価値は何なのだろうと考え続けている」と明かし、「結局、教育は“人”だ。だからこそ、今より属人性をもうちょっと高くすることが、教育を変える一歩になるのではないか」と強調。

 未来の教育について「待っていたら勝手に来てくれるものではなく、私たちが迎えにいくもの」と話し、「大人が学びを楽しめば、子どもも学びを楽しむ。私たち大人は環境や習慣を子どもたちにプレゼントしているんだということを認識しなければいけない。大人が自分を変えていくことが重要ではないか」と述べた。

 東京都渋谷区教育委員会の五十嵐教育長は、「シブヤモデル 未来の学校」について紹介。同区では子ども一人一人が自分の個性を伸ばし、未来をよりよく生きるための力を身に付けることができる「未来の学校」をつくり、学校教育と社会教育の充実を図っていくとしており、順次、同区立小中学校を立て替えていく計画だという。

 まず2年後に青山キャンパス(旧青山病院跡地仮設校舎)が開校する予定で、「ラーニングコモンズを中心に、新しい学習スタイルを支援する学びの空間を実現していく」と説明。新たな学び場では、午前中は子どもたち一人一人の違いに寄り添い、最新テクノロジー体験で好奇心を引き出す教科学習を行い、午後は外部と協働した深く広い教科横断の探究学習をしていく計画で、他の学校でも既存の学校施設を使って同様の学びに取り組んでいくといい、「こうした自律的、探究的な新たな学びへの転換には、教師のマインドセットが必要だ。そもそも教師は探究心の塊であり、それを呼び起こしていきたい」と強調した。

参加者それぞれが考える「未来の教育」について語り合った
参加者それぞれが考える「未来の教育」について語り合った

 同会では、講演と講演の間には参加者同士が4人程度のグループになって、講演内容やそれぞれが考える未来の教育について語り合う時間が設けられた。未来の教育について「学ぶ喜びにあふれる環境」と話した参加者は、「教育を変えようと思っても、反対する保護者も多い。学校や教員と保護者が合意を図っていく必要もあるのではないか」と指摘した。「学びの主体が学び手にある社会」とした参加者は、「自分たちがどう学んでいくのかが自然と語られる社会にしていきたい」と希望を語った。

 また、未来の教育について「分からない」と話す人も。「変化のスピードが速い。だからこそ大事なのは、大人が楽しみながら学び続ける、変革し続けることではないか」と説明。不登校児童生徒の支援をしている参加者は「答えは子どもたちの中にある」と指摘し、「不登校の子どもたちが約24万人もいる。その子たちの心理的安全性が保たれた環境で話を聴くことができたら、いくらでも今の学校教育の問題点を出してくれるだろう。子どもたちの声をいかに聴くかを大事にしていきたい」と述べた。

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