教職大学院の学生、非常勤講師として学校現場に 文科省通知

教職大学院の学生、非常勤講師として学校現場に 文科省通知
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 文科省は6月30日までに、教職大学院の学生が履修する実習について、現職教員の学生の場合には、勤務校で実習を行うことを推奨する通知を出した。勤務校を持たない学部新卒の学生については、非常勤講師として授業の一部を受け持ちながら実践的な実習ができるよう、教職大学院に附属学校や地元の教育委員会との連携を促した。文科省では、通知の狙いについて、「教員不足の中、教職大学院には、学生が学びを深めると同時に、学校現場の戦力になることも考えてほしい。教職大学院の学生は教員への就職率が高いので、教育委員会にとっても教職大学院との連携は将来の優秀な人材の確保につながることが期待される」(総合教育政策局教育人材政策課)と話している。

 文科省によると、教職大学院は2022年度で全国に54校あり、このうち国立が47校、私立が7校。鳥取県と島根県が2県で1校となっているものの、ほとんどの都道府県に1校以上が配置されている。合計の学生数は4258人で、このうち国立が4052人、私立が206人。学生の内訳は、教委からの派遣を含めて現職教員が約4割を占め、教員養成などの学部を卒業してそのまま教職大学院に進学した学生が約6割となっている。

 今回の通知は、こうした教職大学院の学生が「実践的な能力を培う」との目的で10単位以上の履修が求められている学校現場などでの実習について、非常勤講師などとして所定の謝金を受け取りながら、教員不足に苦しむ学校現場の戦力になるように、教職大学院に運用の工夫を求める内容となっている。通知のタイトルは「教職大学院における実習の改善・充実について」で、6月21日付で教職大学院を置く各国私立大学長宛てに発出された。

 具体的には、現職教員の学生が履修する実習については「あらかじめ確保した連携協力校のほか、学生が勤務する学校(勤務校)において実習を行うことも考えられる」と指摘。「こうした取り組みは、現職教員が勤務を継続しながら、教職大学院で学ぶことを可能とするための工夫としても有効である」と、推奨する考えを示した。

 また、勤務校を持たない学部新卒の学生が履修する実習については「附属学校等において非常勤講師等として勤務できる仕組みを構築することも有効である」と、非常勤講師として謝金を受け取りながら授業の一部を受け持つことを視野に入れている。同時に、「各地域の状況に応じ、教育委員会等と連携して、学生が保有する教員免許状の種類に応じた多様な受け入れ先を確保していくといった工夫を行うことも考えられる」と指摘し、教職大学院の附属学校にとどまらず、地元の教委と連携して公立校で授業の一部を受け持つ実践的な実習を行うことを促した。

 ただ、教職大学院の学生による実習が多忙な学校現場の動きに組み込まれ、学生本来の学びが妨げられる恐れもあることから、通知では「学生の負担に十分留意することはもとより、実習が学校での勤務に埋没することのなく充実したものとなるよう、また、学校教育活動の実施に支障が生じることがないよう」に配慮を求めている。その上で、こうした取り組みが円滑に進むよう、教職大学院と教委が実習を巡って「必要な取り決めを行っておくといった工夫を行う」ことを勧めている。

 文科省によると、こうした教職大学院と教委との連携は、すでに一部で実施されており、教職大学院の学生が非常勤講師として教壇に立つケースがある一方、教職大学院での学びを教委の活動と切り分けて運用しているケースもあり、改善の余地がある教職大学院は多いという。また、教職大学院の学生は9割以上が実際に教員として就職しており、教職大学院の学生が公立校の学校現場で非常勤講師として経験を積むことは、教委にとっても教職大学院を卒業した優秀な人材を教員として確保することにつながるとの見方もある。

 文科省では「教職大学院が地元の教育委員会と連携することで、教職大学院で学ぶ現職教員が非常勤講師として授業の一部を受け持つなど、学校現場の戦力となっている事例もある。これだけで教員不足が解決するわけではないが、柔軟な運用による効果は期待できる。教職生活を通じた学びとして中教審の答申が描いた『理論と実践の往還』の実現にもつながるのではないか」(同課)と話している。

【訂正】 記事中に「現職教員の学生の場合には、非常勤講師として勤務校で実習を行うことを推奨する通知を出した」とあったのは、「現職教員の学生の場合には、勤務校で実習を行うことを推奨する通知を出した」でした。「非常勤講師として」の箇所を削除しました。

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