2016年に富山県滑川市立中学校の教員だった男性がくも膜下出血により過労死したことについて、県と市の責任を認めた7月5日の富山地裁判決を受け、永岡桂子文科相は7日の閣議後記者会見で、「教員が過重な疲労や心理的負荷を蓄積して心身の健康を損なうことがないよう、『在校等時間』と業務量の適切な管理をはじめ、学校の『働き方改革』を進めていく」と述べた。また、過労死の大きな要因となった中学校の部活動についても、学校管理下から外れた地域活動に移行させていく考えを改めて示した。
5日の判決は、過労死した教員の時間外労働の中で大きなウエートを占めていた部活動指導について、校長が管理すべき勤務時間と認定した。その上で、校長が各教員の勤務時間を具体的に把握しておらず、亡くなった教員の業務負担軽減に向けた実効性のある対策を取っていなかったことなどを踏まえ、「安全配慮義務違反が認められる」と指摘。富山県と滑川市に対し、遺族に計8300万円を支払うよう命じた。
永岡文科相は今回の過労死について、「『子どものため』と懸命に教育活動に従事していた教師にこのような事態が発生してしまうことは、家族にとって計り知れない苦痛であるとともに、児童生徒や学校にとっても大きな損失で、あってはならないと考えている」と語った。また、19年に給特法を改正し、事実上の残業時間に当たる「時間外在校等時間」の上限を月45時間と定めたガイドラインを同法に基づく指針に格上げするとともに、勤務命令が出ていない業務も含めた時間管理を徹底するよう要請してきたことを強調。「業務量の適切な管理について、さまざまな機会を捉え、引き続き教育委員会に求めていく」とした。
一方、部活動については、22年度に実施した教員勤務実態調査の結果(速報値)で、中学校教員の指導時間が前回の16年度調査と比べて平日で4分、休日は40分減少したことに触れ、「18年に策定した運動部や文化部の活動の在り方に関する総合的なガイドラインによる、適切な休養日の設定などの取り組みの成果が表れてきた」との認識を示した。ただ、ガイドラインが活動上限の目安としている週5日を超えて活動するケースが依然として存在していることなどを踏まえ、「教師の勤務状況の改善がより一層推進されるよう、部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行を進めていきたい」とした。