長期休業明けに増えるとされる子どもの自殺を防止しようと、文科省は7月10日、全国の小中学校や高校の設置者に対し、「GIGAスクール構想」によって配備されたデジタル端末を使って夏休み前からアンケートや教育相談を実施し、子どもたちの悩みを把握して対応するよう通知した。デジタルツールの扱いが得意ではない教員もいることも想定し、端末を使って利用できる健康観察・教育相談システムを一覧にまとめたほか、グーグルやマイクロソフトのサービスを用いてアンケートを実施するためのマニュアルを新たに作成し、参考とするよう求めた。
警察庁・厚労省の自殺統計によると、2022年の小学校~高校の児童生徒の自殺者数は514人と過去最多を更新した。23年の1~5月は164人と前年同期(190人)よりは減少したもの、依然として高い水準で推移している。また、18歳以下の自殺については、夏休みなどの長期休業明けに増加傾向を示し、特に9月1日は突出して発生する年があることが過去の統計から分かっている。
通知はこうした事実を踏まえ、夏休みが始まる前からデジタル端末を活用し、アンケート調査や教育相談を通じて悩みや困難を抱える子どもを把握するよう要請。こうして把握した児童生徒に加え、いじめ被害者や不登校の子どもたちに対しては、登校日や部活動で顔を合わせる機会に面談を実施するなど継続的に様子を確認するとともに、自殺の兆候がみられた場合には管理職や保護者、医療機関と連携して対応するよう求めた。
また、児童生徒の自殺の背景の一つに精神疾患が挙げられていることを踏まえ、学級担任や養護教諭を中心として、きめ細かな健康観察や教育相談を実施するなど、心の健康に対するケアを徹底するよう依頼した。スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを活用する場合は追加配置が認められる可能性があることから、文科省に相談するよう促した。
このほか、▽夏休み中の保護者に対して子どもの見守りをお願いし、悩みや変化があった場合は積極的に学校に相談するよう呼び掛ける▽夏休み明けの前後には保護者や地域住民と連携し、子どもたちの見守り活動を強化する▽インターネット上のパトロールも強化し、自殺をほのめかす書き込みなどの発見に努める――といった取り組みを引き続き実施するよう求めた。