青鳥特支、初戦敗退も2人が出場 高校野球史に新たな1ページ

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7番ライトで先発出場した首藤選手
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 特別支援学校として初めて東京都高等学校野球連盟(都高野連)に加盟した青鳥特別支援学校と松蔭大附属松蔭高校、深沢高校の連合チームが7月10日、全国高校野球選手権西東京大会の2回戦に登場した。松原高校との打撃戦の末、敗れたものの、青鳥特支の首藤理仁選手(2年)がスターティングメンバーで、山口大河選手(3年)が代打で出場を果たした。特別支援学校高等部の生徒が地方大会に出場するケースは全国でも珍しく、都の高校野球に新たな歴史を刻んだ。

 首藤選手は7番ライトで出場。1点リードで迎えた2回、無死一塁の場面で記念すべき初打席を迎えた。結果は詰まり気味の三ゴロだったが、一塁走者が二塁に進塁。追加点につながった。首藤選手は「バットに当たってうれしかった。一生懸命走ろうと思った」(首藤選手)。応援に駆け付けた母・裕子さんも「スターティングメンバーで出場してうれしい。ピッチャーの球を打つ機会がほとんどないので、打てたことがすごいと思った」と話した。

 連合チームは2回に10点を奪われ逆転されたものの、3回に反撃。3点を返し、なおも無死二、三塁で首藤選手の第2打席を迎える。首藤選手は「ボールをよく見ろ」というベンチからの声に応えるように、相手のボールを冷静に見極め四球で出塁。チャンスを広げた。すると、ここから打線が爆発。10点を取り返し、逆転した。

 その裏に6点を奪われ、再びリードを許した連合チームは4回、先頭打者の首藤選手に代わり、山口選手がバッターボックスへ。三振に倒れたが「絶対に打つぞという気持ちだったけど、三振でとても悔しかった」としつつも、「(ストライクのボールを)振れたのでよかった」とすがすがしい表情で振り返った。

4回代打で出場した山口選手
4回代打で出場した山口選手

 試合はその後、一進一退のシーソーゲームに突入。連合チームの1点リードで迎えた6回裏に松原が4点を追加し、三度逆転に成功。8回にも1点を加え、23対19で壮絶な打撃戦を制した。

 青鳥特支の監督を務める同校の久保田浩司教諭は「素晴らしい舞台を踏ませていただいたことに感謝の気持ちでいっぱい。野球を始めて長い選手でも1年ちょっとという中で、完璧なプレーを求めるのはさすがにきつい。大きな舞台を経験したことが生徒にとっても貴重な財産になったと思う」と選手をねぎらった。その上で、「力が定着するとずっとやり続ける能力を持っているので、練習や試合を重ねて自信を持たせたい」と前を向いた。
 
 久保田教諭は2021年に「甲子園 夢 プロジェクト」を立ち上げ、硬式野球をやりたい知的障害のある高校生を集め、定期的な練習会を始めた。地方大会に出場できるようにするため、同校に硬式野球部としてベースボール部を立ち上げ、昨年末に都高野連と加盟申請に向けた交渉を開始。今年5月に正式に加盟が認められ、この日の連合チームでの出場につながった。

 試合を観戦した有上真理副校長は「記念すべき1日。子供たちが晴れ晴れとした表情をしていて、自信につながったと思う。諦めないで前に進める状況を作れば、特別支援学校の生徒にも可能性はいくらでもある。取り組みが全国に広がってほしい」と話した。

 首藤選手の母・裕子さんは「高校から特別支援学校を選択した時点で、健常の生徒との交流は途絶えると思っていた。部活動を通して、交流が持てるのは息子もうれしいだろうし、社会に出る上で貴重な経験にもなっている」と喜んだ。

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