指導主事、資質・能力向上や共同設置を 協力者会議が報告書案了承

指導主事、資質・能力向上や共同設置を 協力者会議が報告書案了承
報告書案を了承した調査研究協力者会議のメンバー(YouTubeで取材)
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 教育委員会の機能強化や活性化などを巡る課題を議論する文科省の調査研究協力者会議は7月18日、最終回となる第15回会合を開催し、これまでの議論を基にまとめた報告書案を了承した。報告書案では指導主事について随所で触れ、「現代的な教育課題への対応などに係る専門性も含めた指導主事の資質・能力の向上を図ること」を求めたほか、指導主事が未配置の教委では近隣自治体と連携して「共同設置」することなどを盛り込んだ。さらに教委による学校運営への支援についても言及し、形式的な手続きの縮減や、保護者からの過剰な苦情などへの支援体制の構築などを促した。

 報告書案「『令和の日本型学校教育』を推進する地方教育行政の充実に向けて(案)」では、具体的な方策について、①教委の機能強化・活性化②教育長と首長の効果的な連携の在り方③学校運営の支援のために教委が果たすべき役割④小規模自治体への対応、広域行政の推進のための方策――の4項目に整理した。

 「①教委の機能強化・活性化」を巡っては、「教育委員会会議の活性化」や「教育長、教育委員の人選、資質・能力の在り方」などについて言及。さらに指導主事についても指摘し、▽さまざまな研修の機会などを通じて現代的な教育課題への対応などに係る専門性も含めた指導主事の資質・能力の向上を図ること▽指導主事の任用前の行政事務に係る研修や指導主事向けのマニュアルの作成――などを求めた。

 「③学校運営の支援のために教委が果たすべき役割」では、「学校の自主性・自立性を促す取り組みの実施」や「教師が教育活動に専念できる環境整備」などを目指すための取り組みを明記。▽教委の形式的な手続きなどの縮減の促進▽学校予算に係る裁量の拡大の取り組みの促進▽保護者などによる過剰な苦情や不当な要求などへの対応に係る各教委の支援体制の構築▽固有の役割を担う学校事務職員がその役割を発揮できるよう支援に取り組むこと▽共同学校事務室などの効率的・効果的な事務処理体制の整備を通じた学校事務の組織体制の強化――などを促した。

 また「指導主事に係る体制整備の支援」についても指摘し、▽指導主事の共同設置の促進を含めた体制整備の支援の検討▽特に小規模自治体を対象にオンラインによる情報交換やネットワークづくりの場の設置を通じた、指導主事の資質・能力の向上や連携の促進――を求めた。

 一方、「④小規模自治体への対応、広域行政の推進のための方策」を巡っては、少子化や過疎化の影響で、学校数や児童生徒数の減少だけでなく、職員数10人以下の教委が全体の約3割、指導主事未配置の教委が約2割を占める実態を問題視した。

 その上で必要な方策として、▽都道府県が広域自治体として、域内の市町村教委が抱える課題の解決や教育のさらなる充実に向けて適切な支援を行う▽広域連携に係る各制度のさらなる活用を促すための、各制度の特徴や留意点などの整理・周知▽近隣市町村との教員研修の合同実施や学校事務の共同実施、指導主事の授業参観に係る講評や授業検討会を行う場合などのオンライン会議システムなどの活用――などを挙げた。

 さらに指導主事など人材の確保を巡っては「近隣自治体と連携して指導主事を共同設置することや、校長経験者などをアドバイザーなどとして任用すること」と明記した。

 これまでの議論を振り返り、清原慶子座長(杏林大学客員教授)は「地方教育行政の現場の視点の重要性、そして教委のみならず首長部局の責任も視野に入れながら議論をしてきたことに意義がある」と総括した。

 「『令和の日本型学校教育』を推進する地方教育行政の充実に向けた調査研究協力者会議」は、2021年1月の中教審答申で挙げられた学校運営を巡る地方教育行政の在り方の検討事項や課題を踏まえて、22年1月に初回会合を実施。計15回の会合で、地方教育行政の充実改善に向けた検討を重ねてきた。

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