精神疾患による公立小中高の退職 21年度は最多の953人

精神疾患による公立小中高の退職 21年度は最多の953人
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 2021年度に精神疾患が理由として退職した公立小中学校・高校の教員が計953人となり、統計を取り始めた09年度以降で最多を更新した。文科省が7月28日に公表した学校教員統計調査の中間報告(速報値)で明らかになった。小学校では離職者(定年退職は除く)の12人に1人を占めており、文科省は業務量の増加や保護者からの過度な要求への対応などが背景にあるとみて、教員のメンタルヘルス対策を強化していく考えだ。

 同調査は、教員の年齢構成や離職者数などを調べるもので、3年に1度実施されている。文科省は今回、21年度中の離職者数や22年10月1日現在の教員の年齢構成などを調べ、結果の一部を中間報告として取りまとめた。

 この結果、21年度にうつ病などの精神疾患を理由として退職した全国の公立校の教員は、小学校571人(18年度比114人増)、中学校277人(同35人増)、高校105人(同22人増)といずれも前回より増え、それぞれ統計を取り始めた09年度以降で最多を更新した。定年を除いた退職者に占める割合は小学校8.1%、中学校7.6%、高校5.2%だった。

 深刻化する教員のメンタルヘルス問題を踏まえ、文科省は23年度、沖縄県や千葉市、神戸市など全国5カ所の教育委員会で、精神疾患の予防や復職支援などのモデル事業を実施している。同省初等中等教育企画課の担当者は「原因分析をするとともに、優れた実践を生み出し、全国に広げていきたい」としている。

 一方、公立小中学校の教員の年齢構成は、第2次ベビーブームに対応して1970~80年代に大量採用された世代の退職が進み、補充のための新規採用も活発に行われたことで、若返りが一層進んだ。管理職も含めた教員の平均年齢は、小学校が42.1歳と前回の19年から0.5歳低下した。中学校も43.0歳と前回より0.6歳下がった。高校は46.2歳で、前回より0.1歳上昇した。

 小中学校では20代と30代の教員の比率が高まる一方、40代の中堅層の人材不足が課題となっている。文科省は「多様な教育活動を展開するためには、年齢構成が偏るのは好ましくない」との認識を示しており、都道府県や政令市の教育委員会に対し、長期的な見通しを持って採用したり、教員免許を持たない社会人も教壇に立てるようにする「特別免許状」を積極的に活用したりするよう、都道府県や政令市の教育委員会に引き続き働き掛けていく方針だ。

 学校教員統計調査では、一部の教員を対象とした抽出方式で、1人の教員が1週間に受け持つ授業数(持ちコマ数)も調べている。授業を担当していない教員を除いた公立校の22年度の平均値は、小学校23.4コマ(19年度比0.5コマ減)、中学校17.6コマ(同0.1コマ減)、高校15.2コマ(同0.2コマ減)だった。小学校については、文科省が22年度から、加配定数を段階的に増やす形で高学年の教科担任制を推進しており、持ちコマ数の削減に一定の効果があったとみられる。

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