2021年度に精神疾患が理由で退職した公立小中高の教員が953人と09年度の調査開始以降、過去最多を更新したことを受け、永岡桂子文科相は8月1日の閣議後会見で、「学校における働き方改革や教職員のメンタルヘルス対策はしっかりと取り組んでいかなければならない」と述べ、教育委員会と連携して精神疾患の予防や復職支援のモデル事業に取り組むなど、深刻化する教員のメンタルヘルス問題の改善に引き続き注力する姿勢を示した。
先月28日に公表された学校教員統計調査の中間報告(速報値)によると、21年度に精神疾患を理由に退職した公立小中高の教員は953人で、過去最多を記録。校種別に見ると小学校571人(18年度比114人増)、中学校277人(同35人増)、高校105人(同22人増)といずれも前回の18年度調査より増え、それぞれ統計を取り始めた09年度以降で最多を更新した。定年を除いた退職者に占める割合は小学校8.1%、中学校7.6%、高校5.2%だった。
教員のメンタルヘルス問題が深刻化している要因について、永岡文科相は、「精神疾患は発症まで時間がかかることがあり、その要因は個々のケースにより多様であるため具体的な要因について一概に申し上げることはできない」としつつも、「例えば、業務の質の困難化、教員間の業務量や内容のばらつき、保護者などからの過度な要望・苦情、不当な要求などが挙げられる」と例示した。
その上で「教員が疲労や心理的負担を過度に蓄積して心身の健康を損なうことがないように、これまでも各教委に対して校長によるラインケアやストレスチェックの実施など、メンタルヘルス対策の充実を求めてきた」と述べた。さらに「今年度より、各教委が専門家などと協力しながら、病気休職の原因分析やメンタルヘルス対策に関するモデル事業を実施して、効果的な取り組みの研究や事例の創出を行うこととしている」などと説明した。
深刻化する教員のメンタルヘルス問題を踏まえ、文科省は今年度より、沖縄県や千葉市、神戸市など全国5カ所の教育委員会で、精神疾患の予防や復職支援などに関するモデル事業を実施している。