山形県米沢市で運動部活動から帰宅中だった中学1年の女子生徒が熱中症とみられる症状で亡くなった問題を受け、文科省は7月31日夜、都道府県や政令市の教育委員会に対し、気温や湿度などから算出する「暑さ指数」などに基づき、活動中止を誰がどんな基準で判断するかを事前に定めるなどの対策を徹底するよう改めて文書で要請した。永岡桂子文科相は8月1日の閣議後記者会見で、山形県教委を通じて原因の確認作業を進めていることを明らかにするとともに、「こういうことが起きないように認識を新たにして、適切に対応いただくようにお願いしたい」と呼び掛けた。
女子生徒は7月28日午前11時すぎ、米沢市内の国道脇の歩道で倒れているのが見つかり、同日夜に死亡した。市教委によると、生徒が所属していた部は当初、午前8時半~11時の2時間半の練習を予定していたが、顧問の教員は気温の上昇に配慮し、終了を1時間早めた。また、練習中は20分おきに休憩を挟んでいた。
一方、熱中症対策について定めた市教委のガイドラインでは、「暑さ指数」を専用機器で測定し、その数値に応じて運動を中止するかどうかを判断するよう求めている。顧問の教員は今回、練習を早めに切り上げることを理由に「暑さ指数」を測定していなかったといい、市教委も「ガイドラインの周知徹底が十分ではなかった」と認めている。
学校保健安全法は各校に「危機管理マニュアル」を定めるよう義務付けており、文科省はその項目の一つとして熱中症対策を盛り込むよう求めてきた。具体的には、日本スポーツ協会の指針に基づき、「暑さ指数」に応じて「運動は原則中止」「激しい運動は中止」といった対応を定め、誰が責任を持って判断するかについてもあらかじめ決めておくよう促している。今年4月には、新型コロナウイルス感染症の収束によって行事や部活動が活発になることを見据え、登下校中も含めた対策を徹底するよう都道府県教委などに通知していた。ただ、死亡事故が起きたことの重大性に鑑み、こうした内容を改めて事務連絡という形で周知することにした。
永岡文科相は山形県の事故を受け、「今年は本当に暑い夏になっており、スポーツを行う際は徹底した熱中症対策に取り組むことが重要だ」と指摘。一方、部活動を中止するかどうかの決定主体については「教育委員会と各学校の判断になろうかと思う」と語った。
また、スポーツ大会の運営についても、昨年12月に部活動の地域移行を見据えて策定した総合的なガイドラインで、夏の大会では空調が整った会場を確保し、難しい場合は夏の時期を避けるなどの考え方を示したことを強調した。今夏の高校野球において、地方大会の決勝の開催時間を変更したり、5回終了時に水分補給のための「クーリングタイム」を設定したりする動きがあることに触れ、「ガイドラインの内容を各大会の主催者に再度、周知してまいりたい」と語った。