中高生を対象にした「ディスインフォメーション(偽情報)」がテーマのワークショップがこのほど、東京都港区の笹川平和財団ビルで開催された。夏休み中の中高生約20人が参加し、ディスインフォメーションの仕組みを学んだ上で、日頃から慣れ親しむSNSの情報の正誤を見極めるワークに挑戦した。日常的にSNSを駆使する中高生たちでも「見極められるか分からない」などと、ネット上にはびこるディスインフォメーションの巧妙さに驚きの声を上げた。講師はディスインフォメーションを研究する同財団の大澤淳特別研究委員と、ファクトチェックに詳しい㈱メディアコラボの古田大輔代表が務めた。
ディスインフォメーションとは組織や個人などの信用を失墜させるために、意図的に流す虚偽の情報。海外ではすでに社会的にインパクトを与えており、2016年の米国大統領選やロシアによるウクライナ侵攻などでも大きな影響を及ぼしたと言われている。
冒頭で古田代表が「フェイクニュースや偽情報を目にしたことがありますか?」と会場に問い掛けると、半数以上の中高生が挙手した。「見たことがないと思っている人は、すでにだまされている人です」と続け、その言葉に会場がどよめいた。「スマホにもテレビにも、看板にも間違えた情報はそこら中に溢れている」と古田代表は警鐘を鳴らし、ファクトチェックの手法について、①発信元を見る②疑義の指摘を確認する(リプライやコメント欄の反応を見る)③メディア・公的機関・当事者の発信を確認する④ソースを探す――と示した。
大澤特別研究員は、ディスインフォメーションが社会に与える影響について説明。直近で社会を混乱におとしめた事例として、新型コロナウイルス感染症やワクチンを巡る偽情報を挙げた。「皆さん一人一人が情報を見たときに、正しいかどうか見分けるスキルをつけることは、社会の安定にとって非常に重要」と呼び掛け、ディスインフォメーションの特徴として正しい情報の中に偽情報を交える手法があることも説明して、注意喚起した。
中盤では、実際に国内外のSNSなどで拡散されたディスインフォメーションをテーマに、クイズ形式で学びを深めた。
例えば、東日本大震災の直後に「福島県では放射能の影響で花の形がゆがんでいる」と投稿された1枚の写真データ。いびつにゆがんだ花が写っている。それに対し生徒は「これが福島県で撮られた写真かは分からない。拡散すべきではない」と指摘した。講師からはこの写真について、細菌の感染などが影響の「帯化」という突然変異が起こったことや、放射能と因果関係がないことなどが説明された。その上でテキストだけでなく、画像や動画などを加工し偽情報が拡散されている現状に注意を促した。生徒の一人は「字だけだったらうそだと思うけれど、画像を見てしまうと半分信じてしまう」と、ネット上の情報操作の巧妙さに戸惑いを見せた。
後半では、日頃から触れているSNSを使って、生徒自らがディスインフォメーションを探すワークに挑戦した。
脱毛サロンの広告を挙げた生徒は、「お得な料金設定をうたっているが、口コミを調べてみると違う情報が出てきた。とはいえ、口コミが正しいとも限らない」と迷った様子を見せた。講師からは「否定する情報が正しいとは限らない」とアドバイスがあり、複数のサイトで情報を比較したり、新聞やテレビなど複数から情報収集したりしながら、情報を精査することの重要性が指摘された。
ワークショップ後、保護者からの勧めで参加したという中学1年生の生徒は「学校では、新聞やニュースサイトの情報が正しいと教えられた。ただ個人的にはSNSの方が面白いので、そこで情報収集してしまう。今までは怪しい情報と思っても、どうすればいいか分からなかったけれど、今日学んだことを生かしたい」と感想を語った。