新しい教育の魅力が体験できる教育研究フェス「Tokyo Education Show」が8月19日と20日の両日、東京学芸大学の会場とオンラインのハイブリッドで開催された。会場には子どもたちや保護者、教員、学生など約900人が参加。20日には、新卒1年目で広島桜が丘高校(広島市)の副校長に就任した桐原琢副校長や、日野田直彦武蔵野大学附属千代田高等学院中高学園長兼千代田国際中学校長らが登壇し、新時代の教員のキャリアについて語り合った。
「Tokyo Education Show」はNPO法人「教育の環」が運営。初日の19日には子どもやファミリーで参加できる公開講座が実施され、立命館小学校の正頭英和主幹教諭やサイエンスアーティストの市岡元気氏らが授業を行った。20日は教育業界のステークホルダーが登壇した教育サミットや教育若者会議などが行われた。
20日に教育若者会議の一つとして行われた「『教員のキャリア』新時代の教員のキャリアと学び方」には、日野田校長、桐原副校長、教員養成課程のアップデートに取り組む学生の小倉未来さん(東京大学)、延原令奈さん(神戸大学)が登壇した。
桐原副校長は、中央大学在学中に「置かれた環境によらず、受けたいと思う教育を受けられる環境づくり」を目指し、YouTubeチャンネル「PASSLABO」を立ち上げた。昨年度から広島桜が丘高校のアドバイザーとして学校改革に携わり、大学を卒業した今年4月からは、新卒1年目で同校の副校長に就任という異例のキャリアを築いている。
同校は定員割れが続き、これまで地元では「荒れている学校」と言われていた。桐原副校長は「日本の教育はずっと変わっていない。同質性の高い授業や管理教育がずっと残っている」と指摘。今年度から新たな教育理念として「自考自創」を掲げ、「『生きたいように生きられる力=自分の人生を創り出す力』を育むために、学校改革を進めている」と説明した。
4月以降、具体的には「定期テスト」「教員主導の行事」「教員が話すだけの授業」「教員が成績をつける」ことをやめたという。「定期テストは単元テストに変え、何度失敗してもいいようにした。行事は生徒が運営し、成績は教員と生徒でつける。生徒それぞれに合わせた授業も進めていて、週5時間の探究授業にも取り組んでいる」と話す。
副校長に就任して約5カ月、今までのスタイルを変えていくことに難しさも感じていると言うが、「これから先、求められる教員とは、挑戦し続ける人、常にアンテナを張っている人、生徒を信じて待てる人、そしてなにより、遊んでいる人、楽しんでいる人だと考えている。授業がうまいよりも、いかにその先生が人生を楽しんでいるのかを、生徒たちは見ている」と強調。
「私は大学を2浪した。周りにも2浪している人はほとんどおらず、いったんレールから外れたのだと思った。しかし、レールを外れたことによって、生きたいように生きよう、やりたいことだけをやろうと思えるようになり、今に至っている。レールを外れることや、失敗することはとても大事だ。キャリアは自分の好きなように描くのが、一番の正解ではないか」と訴え掛けた。
また、日野田校長は「キャリアを極めることも大事だが、一回キャリアをつくったら、全て捨てることも大事だ。若いうちは、できるだけ振れ幅を広く、視野を広げることも大切だ。キャリアは誰かがつくってくれるのではなくて、自分でつくるものだと思って、どんどん最前線に突っ込んでいった方がいい」とエールを送った。