児童、保護者、教員が対話 「幸せな子ども時代とは」をテーマに

児童、保護者、教員が対話 「幸せな子ども時代とは」をテーマに
幸せな子ども時代について語り合う児童、保護者、教職員
【協賛企画】
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 子どもも大人も教員も、みんなで学校や教育について対話しよう━━。埼玉県戸田市立美女木小学校(田野正毅校長、児童670人)で8月21日、映画『夢みる小学校』の上映会と対話会が開催された。同校の児童や保護者、地域住民、教職員など約90人が参加し、映画を見て感じたことや、「幸せな子ども時代ってどんなもの?」をテーマに対話した。参加した児童は「みんなで一緒に対話してみて、大人や先生たちが『子どもたちにもっとやりたいことをやってほしい』と思ってくれていることが知れてよかった」と笑顔を見せた。

 同校では昨年度の夏休みに学校運営協議会委員、PTA役員と教員が「子どもたちの未来」をテーマに対話型ワークショップを行った。今年度は同校の主役である児童も一緒に対話する機会を設けたいと、教育ドキュメンタリー映画『夢みる小学校』上映会と合わせて対話型ワークショップを企画。「映画が気になっていたので参加した」「大人と対話できることを楽しみに来た」と、高学年の児童を中心に29人の子どもたちが参加した。

 上映された『夢みる小学校』は、宿題がない、テストがない、“先生”がいないという「きのくに子どもの村学園」の一つ、「南アルプス子どもの村小学校」に1年間密着し、製作されたドキュメンタリー映画(監督・撮影・編集、オオタヴィン氏)。教科書などで勉強することよりも、実際に作ったり調べたりする活動を重視しており、「プロジェクト」と呼ばれる体験学習が時間割の半分を占めている。

 鑑賞後は大人と子どもが混ざった5人程度のグループで、映画を見て感じたことを語り合った。教員は「自分の目の前の学校教育とは違うものだったので、いろいろと整理が必要だなと感じた」ともやもやした気持ちを抱いた人が多かったようだ。一方、子どもたちは「映画のような学校に行ってみたい」という子もいれば、「自分はルールとか決まりがあった方が行動しやすいし、教科書で勉強した方が勉強しやすい。映画のような学校だと、甘えて何もしなくなりそう」と感想を話す子もいた。

 続いて、映画の感想も踏まえて「幸せな子ども時代ってどんなものだろう?」をテーマに、グループで対話した。児童に「どんな時が幸せだと感じるか」を聞いていたグループでは、2年生の児童が「給食がおいしいと幸せ。あとは休み時間が楽しい。授業で楽しいと思えるのは図工かな」と発言。そこから「なぜ図工の授業は楽しいと思えるのか?」を深掘りしていくと、児童は「ずっと座っている授業や、先生の話をずっと聞く授業は楽しくない。図工は自分でやってみるから楽しい」と答えた。

 こうした子どものリアルな声を聞いた教員は、はっと気付かされた様子で、「自分も子どもの頃、ずっと座っていたり、一方的に先生が話したりしている授業が苦痛だと思っていたのに、いざ自分が教員になってみると同じようなことをやってしまっている」と話していた。

 別のグループでは、6年生の児童が「自分がやりたいことをやれるのは幸せだと思うけれども、自分のやりたいことを先生や大人に言う勇気がない。駄目だと言われるかなとか、考えてしまう」と気持ちを打ち明けた。グループの大人からは「子どもたちが失敗しないように大人は先回りしているところがあるのではないか」と反省する声や、「もっとやりたいことは言っていい」と励ます声も上がっていた。

 対話の時間を終え、この6年生の児童は「親や先生たちが、『子どもたちにやりたいことや夢中になれることをやらせてあげたい』と思ってくれていることを知った。大人や先生たちとじっくり話せてよかった」とうれしそうに話した。

 田野校長は「私自身、この映画を見てモヤモヤとしたし、いろいろなことを考えさせられた。一つ言えるのは、これから先の予測困難な時代に向けて、学校や教育をどうしていけばいいのか、大人も子どもも一緒になって話していく時間が必要だということ。子どもたちを中心とした学校教育を、皆さんと一緒に考えていきたいという思いを強くした」と述べた。

 また、この会で司会を務めた井上咲希教諭は「今年から子どもたちも対話に加わったことで、今、何が幸せだと感じているのかをじかで聞けたことはとても大きかった。本校では哲学対話にも取り組んでいるが、2学期以降も子どもたちと対話の時間を意識的につくっていきたい」と語った。

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