自殺対策やDXなどで新規事業 こども家庭庁が概算要求公表

自殺対策やDXなどで新規事業 こども家庭庁が概算要求公表
【図1】こども家庭庁の来年度予算概算要求の全体像
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 こども家庭庁は8月24日、来年度予算の概算要求を公表した。概算要求額は年金特別会計も含め4兆8886億円で、前年度予算額より782億円増加した。さらに6月に閣議決定した「こども未来戦略方針」で示された「こども・子育て支援加速化プラン」で掲げられた施策については、今後の予算編成過程で具体的に検討していくことから、その多くは事項要求とされ、全体の予算額は年末までに固まる見通しとなっている。こどもに関するデータ連携の実証事業など、こども政策DXの推進や6月に取りまとめた「こどもの自殺対策強化プラン」に基づく取り組みなどで新規事業を打ち出した。

【図1】こども家庭庁の来年度予算概算要求の全体像
【図1】こども家庭庁の来年度予算概算要求の全体像

 概算要求額の内訳をみると、一般会計の4兆483億円のうち、子どものための教育・保育給付交付金、児童手当などの年金・医療に関する経費が3兆2183億円で、保育の受け皿の整備や障害児サービスのニーズの増加などを受けて、369億円の自然増となった。人件費や大学等就学支援費などの義務的経費は5406億円で前年度予算額からほぼ横ばい。就学前教育・保育施設整備交付金や保育対策事業費補助金などの裁量的経費は2893億円で、裁量的経費を1割削り、その3倍までの額を要求できる重要政策推進枠を活用し、420億円増やした。一般会計からの繰り入れを除く特別会計は前年度比10億円減の8403億円(=図1)。

 これに加え、全体として3兆円半ばの充実を目指すとしている「こども・子育て支援加速化プラン」などで盛り込まれた施策については、多くが事項要求とされており、具体的な予算規模は年末にかけての予算編成過程で検討されることになる。

 概算要求でうたわれている事業をみると(=図2)、こども・若者の意見聴取や政策への反映に向けた取り組みや調査研究、自治体のこども計画策定に向けた支援、こども・子育てにやさしい社会づくりのための意識改革などに前年度予算の2倍以上となる11億円を充てるほか、新たに自治体がこども政策のDXなどで質の高い事業者とマッチングできるようにするこども政策DX見本市の開催や、こどもに関する教育や福祉のデータを分野を超えて連携させ、プッシュ型、アウトリーチ方の支援につなげるこどもデータ連携の実証事業などに8億円を計上した。

【図2】概算要求のポイント(抜粋)
【図2】概算要求のポイント(抜粋)

 子育て支援やこどもの居場所づくりでは、「新子育て安心プラン」に基づき保育所などの整備を推進するだけでなく、保育人材の確保に向けて、保育士資格を持っているが、現在は保育士として働いていない「潜在保育士」の保育士としての就業を促すため、潜在保育士がまずは保育補助者として保育の現場で働き、段階的に保育士になっていけるような支援策の拡充、キャッシュレス決済の導入費用を補助対象に追加するなどの保育現場のICT化を進める。

 また、学童保育の受け皿整備については「こども未来戦略方針」を踏まえ、文科省と連携しつつ予算編成過程で検討するが、入退館の把握や見守りを行う専門スタッフの配置支援を行う「放課後居場所緊急対策事業」の補助対象範囲を拡大し、学校敷地外だけでなく学校敷地内で事業を実施する場合でも補助対象とする。児童館については、中高生世代に対応するなどの機能強化を進める児童館の施設整備の補助率を3分の1から2分の1にかさ上げする。

 こどもの安全では、保育や教育をはじめとするこどもと接する職に就く場合に、性犯罪歴がないことを証明する「日本版DBS(Disclosure and Barring Service)」の構築に向けた体制整備や、保育所などの送迎バスの置き去り防止対策、日本スポーツ振興センターが実施する学校の管理での児童生徒の負傷、疾病などに対し、医療費や見舞金を支給する災害共済給付の補助などを盛り込んでいる。

 昨年のこどもの自殺が514人と過去最多となったことを受けて、6月に「こどもの自殺対策に関する関係省庁連絡会議」が取りまとめた「こどもの自殺対策緊急強化プラン」を踏まえ、新たにこどもの自殺の要因分析に関する調査研究や9月の自殺予防週間、3月の自殺対策強化月間に合わせた広報啓発活動を実施。自治体の首長部局で専門家を活用するなどして、いじめの相談から解消まで関与する手法の開発・実証を行うことを通して、いじめの長期化・重大化を防いだり、学識経験者などの専門家を「いじめ調査アドバイザー」として、重大事態の調査をする自治体に第三者性の確保に関して助言したりする、地域でのいじめ防止対策の体制構築にも引き続き取り組む。

 この他にも、改正児童福祉法の施行による児童虐待防止対策や社会的養護の充実、ヤングケアラー支援、障害児支援体制の強化などを盛り込んでいる。

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