環境教育等促進法に基づく基本方針の改定に向けた議論を行っている環境省の環境教育等推進専門家会議は8月24日、第3回会合を開き、環境教育に取り組む学校現場などからヒアリングを行った。学校を核にして持続可能な地域づくりにつなげたり、主体的な行動者としての生徒を育てることに主眼を置いたりした実践が報告された。
この日の会合では、北海道羅臼町立羅臼小学校、新渡戸文化中学校・高校、山口県立周防大島高校、日本環境協会こどもエコクラブ全国事務局が発表を行った。
羅臼小学校の佐藤英雄教頭は、町内の幼・小・中・高でふるさと教育、海洋教育、環境教育の一環カリキュラムを組んでいることや、地域資源を生かした羅臼小学校における各学年の取り組みを紹介。特に5年生では名産の羅臼昆布を題材にした「こんぶ図鑑づくり」に取り組んでおり、地元の昆布漁師から昆布の切り方を教えてもらったり、昆布倉庫を見学したりして、「こんぶ図鑑」を完成させ、道の駅などで閲覧できるようにしているという。また、6年生では新たな挑戦としてインスタグラムを活用して学習内容を発信。地域だけでなく全国から注目されるようになっているという。
佐藤教頭は環境教育の課題として「質や効果を高めるには教師のアンテナの質を高める必要がある。ただ学校現場は教師の異動があり、環境教育の目的を共有し続けるのが難しい。異動してすぐにアンテナを高くする教師もいるが、教師の力量に左右されてしまう面はある。外国語教育が入ってきたり、ICT教育が入ってきたりしていて、『総合的な学習の時間』にまで教材研究をする余裕が生まれないのが現実としてある。そのため前年度と同じ活動に陥りやすい。環境教育をいかに持続可能にしていくか」と、教員の負担の大きさを挙げた。
東京都中野区にある私立の新渡戸文化中学校・高校では、気候変動などの環境変化に対し、主体的な行動者を育成することを目指した教育を展開。修学旅行に代わって、持続可能な取り組みをしている全国各地の自治体へ生徒がスタディツアーに出掛けるようにしている。
山藤旅聞副校長は「この旅では自炊をするので、値段がとても安く、ホテルにも泊まらず古民家などに泊まる。修学旅行の積立金と同じ予算で、高校3年間で4回行ける。複数回行った子の価値変容は大きい。議論を始めている子も含めて、行動変容している」と強調した。
2014年度に「地域創生科」を設置し、生徒の全国募集を始めるなど、早くから地域づくりの人材育成に力を入れてきた周防大島高校では、生徒のアイデアを産官学のさまざまなステークホルダーがサポートし、実現させていく地域循環共生圏づくりプラットフォームを構築。実現したものとして、例えば、周防大島の海底に生息している日本固有種のニホンアワサンゴを観光客が観察しやすいように、透明なグラスボートを活用したエコツーリズムや塩あめの商品開発などがある。
大田真一郎校長は「生徒たちを支援していこうという結び付きができてきている。今までは自治体でいろいろな事業を立ち上げていたが、それぞれの共通理解が図れていないことが多く、無駄が多かったと考えている。ステークホルダーがそろっていけば、中心が生徒でなくても何かアイデアがあれば支援をしてくれるイメージができあがるのではないか」と手応えを話した。