中教審の特別部会が8月28日午前、永岡桂子文科相に緊急提言を提出したことを受け、現職教員や学者らでつくる「給特法のこれからを考える有志の会」が同日、文科省で記者会見を開いた。メンバーたちは緊急提言の内容は不十分だと指摘し、教員が担う必要のない業務の整理を一層進めたり、教員1人当たりの受け持ち授業数(持ちコマ数)の大幅削減に向けた取り組みを議論したりすることを求めた。
同会は、公立学校教員には基本給の4%を「教職調整額」として上乗せ支給する代わりに時間外勤務手当・休日勤務手当(残業代)を支払わないと定めた給特法の廃止や抜本的見直しを求めて活動している。この日は同会のメンバーである岐阜県立高校の西村祐二教諭、日本若者協議会の室橋祐貴代表理事、日本労働弁護団の嶋﨑量弁護士の3人に加え、賛同者として日本大の広田照幸教授と横浜市立小学校の渡邉知和副校長が出席した。
西村教諭は教員が担う業務の精選を進めるとした特別部会の緊急提言に対し、「(同じように中教審が教員の負担軽減を議論した)2017年の緊急提言ではタイムカードや留守番電話の導入といったありがたいメッセージがあったが、今回は目玉となるような政策がなかった。希望が持てるものではないというのが率直な受け止めだ」と語った。特に教員の負担軽減が可能な業務を14項目に整理した19年1月の中教審答申に基づいて負担軽減の議論が進んでいることに危機感を示し、「14項目に入っていないものにも、『これは教師がやらなくていいだろう』と考えられる業務が山のようにある。より多岐にわたる業務の仕分けを行っていただきたい」と注文を付けた。
また、「中教審には現場の教師の意見が反映されていない」として、教員の声を拾い上げる仕組みも設けるよう要望した。給特法については、廃止や抜本的見直しによる残業代の支払いを今後も求めていく考えを示しつつ、最低限実現してほしい改正点について、「残業時間が国の指針の上限(月45時間、年360時間)を超えた場合、管理職には罰則を科すという内容が入れば、少しは光明が見えると個人的には思う」と語った。
日本大の広田教授も緊急提言について、「これでは全く状況は改善できない」と批判した。その根拠として、文科省が22年度に実施した教員の勤務実態調査に基づくシミュレーションを示し、授業以外の業務削減や成績処理の効率化、部活動指導の外部化を実施したとしても、公立小中学校の教員は勤務時間内で仕事を終えられないと説明した。
広田教授は「教員を増やし、持ちコマ数を減らさない限り、所定時間に収まらない」と強調。28日の中教審の特別部会で妹尾昌俊委員が、義務標準法が定める係数(乗ずる数)の改善による持ちコマ数の削減を提案したことを評価し、「働き方を変えるための急所は義務標準法だ。このまま時代遅れの係数でやっていくのは最悪だ」と主張した。
特別部会の緊急提言は、文科省が定める標準授業時数を大幅に上回っている学校は、時数削減に向けた見直しを行うことを盛り込んだ。これに対し、横浜市立小学校の渡邉副校長は、自身の勤務校では標準授業時数まで時間割を削減しているにもかかわらず、定時で仕事を終えようと思えば、授業準備や事務作業の時間が1日20分しか確保できないと説明。「工夫だけでどうにかなる段階ではない。1人の先生の持ちコマ数を減らしてほしい」と訴えた。