関東大震災から100年の節目に当たる「防災の日」に合わせ、特別支援学校の児童生徒が災害時に安心して避難できる環境整備を求め、日本小児神経学会や障害のある子どもの保護者らの団体が9月1日、文科省で記者会見を開いた。また会見に先立ち、藤江陽子文科審議官に要望書を提出し、特別支援学校に通学する児童生徒が、災害時に自分の通う学校に優先的に避難できる「子どものための指定福祉避難所」を国が主導して整備するよう要望した。
同学会によると、発達障害や医療的ケア児など障害のある児童生徒の避難先を巡っては、慣れない場所のためパニックを起こしたり、医療的ケアに必要な電源が確保できなかったりなど課題が多く、日常的に利用している特別支援学校に避難したいという声が当事者や保護者から上がっていた。障害者など支援の必要な人が避難するための福祉避難所は、2019年10月時点で全国に約2万3000カ所あるものの、多くが高齢者施設や成人向けの障害者施設で、障害のある子どもに特化した避難所は十分に確保されていないという。
同学会が昨年実施したアンケート調査によると、全国の特別支援学校約1200校のうち、福祉避難所として指定されていたのは約3割の158校、通学児童生徒を優先して受け入れる「子どものための指定福祉避難所」は10校にとどまった。特別支援学校で整備が進まない理由について、同学会は、多くの場合で福祉避難所は市町村、特別支援学校は都道府県がそれぞれ設置しているため、連携が取りづらい可能性を指摘した。その上で、記者会見では国が積極的に都道府県や市町村などに働き掛ける必要性を訴えた。
記者会見には東日本大震災を経験した、医療的ケア児の母親である新田理恵さんも参加。当時中学生だった娘の綾女さんと共に一般の避難所に避難したものの、医療的ケアのための電源が確保できないなど生活がままならず、車中泊や親戚宅を転々とした経験を語った。その上で「通い慣れている特別支援学校に避難できるようになれば、とても安心できる。災害弱者に基準を合わせた避難所づくりが進んでほしい」と強調した。
また、同学会の加藤光広理事長は「災害が起こってからでは遅い。教育、医療、福祉などさまざまな分野が連携して、一緒に考えていかなければいけない問題だ」と呼び掛けた。