こども大綱に向けた中間整理案 学校の働き方改革も明記

こども大綱に向けた中間整理案 学校の働き方改革も明記
こども大綱の策定に向けた中間整理案が示された基本政策部会の第8回会合(YouTubeで取材)
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 今後5年程度のこども・若者に関する施策の基本方針を定める「こども大綱」の策定に向けて議論している、こども家庭審議会の「基本政策部会」は9月4日、第8回会合を開き、同審議会としての意見の中間整理案を検討した。中間整理案では、常にこども・若者の最善の利益を考え、「こどもまんなか社会」を実現していくことをこども大綱の使命と位置付け、学校教育に関しては、これまで学校が果たしてきた基本的な役割を継承しつつ、働き方改革やGIGAスクール構想による1人1台端末の活用などを進め、教職員が本来求められている役割を存分に発揮できるようにしていく方針を重要事項の中に組み込んだ。

こどもの育ちや支援に関わる関係者の職場環境の改善を明記

 年内の策定に向けて、従来の「少子化社会対策大綱」「子供・若者育成支援推進大綱」「子供の貧困対策に関する大綱」を一元化し、必要なこども・若者施策を加えて整理することになるこども大綱。この日の基本政策部会の会合で示された中間整理案では、こども大綱が目指す「こどもまんなか社会」を、全てのこども・若者が日本国憲法、こども基本法、子どもの権利条約の精神にのっとり、等しくその権利が擁護され、身体的・精神的・社会的に将来にわたって幸せな状態(ウェルビーイング)で生活できる社会とし、常にこどもや若者の最善の利益を第一に考え、こどもや若者を権利の主体として認識し、社会全体で「こどもまんなか社会」を実現していくことをこども大綱の使命だとした。

 その上で、こども施策の基本的な方針として①こども・若者を権利の主体として認識し、その多様な人格・個性を尊重し、権利を保障し、こども・若者の今とこれからの最善の利益を図る②こどもや若者、子育て当事者の視点を尊重し、その意見を聴き、対話しながら、共に考えていく③こどもや若者、子育て当事者のライフステージに応じて切れ目なく対応していく④良好な成育環境を確保し、格差や貧困の解消を図り、全てのこども・若者が幸せな状態で成長できるようにする⑤若い世代の生活の基盤の安定を図るとともに、多様な価値観・考え方を大前提として若い世代の視点に立って結婚、子育てに関する希望の形成と実現を阻む隘路(あいろ)の打破に取り組む⑥施策の総合性を確保するとともに、関係省庁、地方自治体、民間団体等との連携を重視する――の6つの柱を掲げた。

 特に③では、こども・若者や子育て当事者が抱えている課題が深刻化・複合化していることから、単一分野の専門性だけでは解決できないとの認識の下、家庭、学校・園、企業、地域などの社会のあらゆる分野の全ての人々が、学校・園などの場をプラットフォームに相互に協力しつつ、ネットワークを形成し、協働しながら一体となって支えていく必要性を、④では、教職員や保育士、児童相談所の職員をはじめ、こども・若者の育ちや支援に携わる関係者の職場環境の改善、多様な人材の確保・養成、資質強化、専門性の向上、メンタルケアなどの充実を明記した。

質の高い公教育の再生が重要事項の項目の一つに

【図】こども施策に関する重要事項のポイント
【図】こども施策に関する重要事項のポイント

 中間整理案ではさらに、具体的なこども施策に関する重要事項は、分かりやすくライフステージ別に提示した()。まず、特定のライフステージにとどまらず、複数のライフステージを通して縦断的に実施すべき重要事項には①こども・若者が権利の主体であることの周知徹底②多様な遊びや体験、活躍できる機会づくり③こどもや若者への切れ目のない保健・医療の提供④こどもの貧困対策⑤障害児支援・医療的ケア児への支援⑥児童虐待防止対策等と社会的養護の推進⑦こども・若者の自殺対策、犯罪などからこども・若者を守る取り組み――を列挙し、中でも②では、こども・若者が活躍できる機会づくりとして、国際交流、持続可能な開発のための教育(ESD)、STEAM教育、アントレプレナーシップ教育の推進などに触れた。

 次に、ライフステージ別の重要事項は①こどもの誕生前から幼児期まで②学童期・思春期③青年期――に分けて整理。②では「こどもが安心して過ごし学ぶことのできる質の高い公教育の再生」として、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実させ、学習機会と学力の保障、社会の形成者としての全人的な発達・成長の保障、安全安心な居場所・セーフティーネットとしての身体的、精神的な健康の保障の3つを学校教育の本質的な役割として継承し、取り組みを着実に進めていくこと、学校における働き方改革や処遇改善、指導・運営体制の充実の一体的推進、1人1台端末の活用などを進め、教職員が本来求められている役割に対し、その力を存分に発揮できるようにしていくこと、特別支援教育の充実、部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行に向けた地域のスポーツ・文化芸術環境の整備などを盛り込んだ。

 また、子育て当事者への支援に関する重要事項では、子育てや教育に関する経済的負担の軽減、ひとり親家庭への支援などが項目に並んだ。

 中間整理案は今後、こども家庭審議会の他の部会でも検討され、9月末に取りまとめられる。その後、10月にはこども・若者や子育て当事者などへのヒアリングも実施される予定で、さまざまな方法でこども・若者の意見を反映していく方針。

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