教員不足の解消に向け全国の取り組みを共有 教師未来サミット

教員不足の解消に向け全国の取り組みを共有 教師未来サミット
座談会で語り合う参加者たち
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 産休や育休を取得した教員の代役が見つからない「教員不足」が全国的に深刻となる中、教師の魅力発信や担い手の確保策について先進的な取り組みを共有し合う「全国教師未来サミット」が9月4日、文科省で開かれた。各地の教育委員会や教員養成に取り組んでいる大学の担当者らが集まり、教員の志望度が高くない学生に向けたアピールやペーパーティーチャーを対象としたセミナーの開催など、それぞれの取り組みの成果を紹介した。

 簗和生副文科相を中心とした省内の若手職員の勉強会での議論がきっかけとなり、今回初めて開催された。会場の様子は「YouTube」を通じて、全国の教育関係者にもライブ配信された。

東京都は教員志望度が高くない層にもアピール

 全国一の人口を抱える東京都の教育委員会は、2022年度に開催した「TOKYO教育Festa!」について発表した。教師の志望度がそれほど高くない層にも教職の魅力をアピールしようと、現職教員が参加する座談会や模擬授業体験などを実施。500人を超える参加者が集った。

 イベントの開催にあたっては、SNSの情報に基づき、教員の仕事についてネガティブなイメージを抱いている人がいることを踏まえ、現職教員と直接話せる機会を作ることを意識した。また、民間企業と比較する際に参考にしてもらうため、給与や休暇といった処遇面をきちんと伝えるようにしたという。都教委の担当者によると、参加者からは「ブラックだと思っていたけれど、そうでもなさそうだと思った」との感想も寄せられた。今年も10月15日に開催を予定している。

大阪では教員養成に取り組む大学がイベント

 大阪府で教員養成に取り組んでいる四天王寺大は、教員志望者を増やす目的で6月に初めて実施したイベント「大阪の先生になろう!」を紹介した。同学の呼び掛けにより、教員を養成している府内の18大学が参加し、大阪府教委も後援した。

 イベントには約300人が来場し、若手教員が教職を志したきっかけや仕事とやりがいなどを語る座談会は立ち見者も出るほどの盛況だったという。座談会には府内の自治体の教育長に参加してもらい、教員の給料が民間企業の平均に比べて高いこと、増額が検討されていることも説明してもらった。四天王寺大の和田良彦副学長は「今後は4月の段階でイベントを実施し、大学生が多く参加できるようにしたい」と語った。

「ペーパーティーチャー」を掘り起こす埼玉県

 「教員不足」に悩む埼玉県教委は昨年度、「教員免許更新制」が廃止されたことを踏まえ、潜在的な教員のなり手を掘り起こすため、免許を保有しながら教壇に立っていない「ペーパーティーチャー」を対象としたセミナーを3度にわたって開催した。特に教員採用試験が狭き門だった平成初期に教員免許を取得した40~50代に照準を合わせ、県の広報誌やテレビ、ラジオなどを通じて参加者を募った。

 セミナーでは福利厚生や学校の現状、教員としての心構えなどについて講義するとともに、ペーパーティーチャーから正規教員になって活躍している人の学校での様子やインタビューを動画で紹介。不安を抱える参加者たちが、教職に就くイメージを持ってもらえるよう心掛けたという。県教委によると、計187人の参加者の約3分の2が40~50代だった。セミナー後に75人が講師の候補者として登録し、23年4月時点で24人の任用につながった。23年度は回数を5回に増やすとともに、より多くの人が参加しやすいよう会場を県内4カ所に分散させる。

 発表終了後は参加者による座談会が催され、それぞれの取り組みで苦労した点や参考になった点などを語り合った。教師の魅力について尋ねられた担当者らは「人の心に一生残るというのが一番の魅力」「目の前にいる子どもがどんな変化をするのかというのはドラマだ」などと述べた。

 最後まで発表を聞いていた簗副文科相は「教師を目指すにあたって職業として意識した時に、さまざまな不安や疑問もあると思う。(教師の仕事を)体験できるような企画を交えて、実像を伝えていくことが、魅力を伝える上で重要なことだと認識した」と述べた。その上で「皆さんで事例を共有する取り組みが重要だ。こういう場をさらに発展させていただきたい」と呼び掛けた。

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