日本版DBSの有識者会議が報告書案 学校などに義務付け

日本版DBSの有識者会議が報告書案 学校などに義務付け
内田座長から報告を受ける小倉担当相(右)
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 教員や保育士など、こどもと接する仕事に就く際に、性犯罪歴がないことを証明する「日本版DBS(Disclosure and Barring Service)」の制度化に向けて検討してきたこども家庭庁の有識者会議は9月5日、第5回会合を開き、有識者会議としての報告書案を大筋で了承した。これを踏まえこども家庭庁では、次の国会で日本版DBSの法案を提出する方針。報告書案では、学校や児童福祉施設などの設置者に対して、こどもの安全を確保する責務を法律に明記し、日本版DBSでこどもと接する職員の性犯罪歴を確認する義務を定めるべきだとした。一方で、民間の学習塾やスポーツクラブなどは認定制とし、利用者に対して認定を受けた事業者が分かるようにすることを提案した。

 報告書案では、こどもの未熟さや立場の弱さに乗じて行われるこどもへの性犯罪・性暴力は、第三者が被害に気付くきっかけをつかみにくく、加害行為が継続する可能性が高いと指摘。こどもが教育や保育を提供する業務に従事する大人による性犯罪・性暴力の被害に遭うことのないよう、未然に防ぐ仕組みとしての日本版DBSの必要性を強調した。一方で、日本版DBSはこどもに関連する仕事に就こうとする人の職業選択の自由や事業者の営業の自由を制約する側面もあるため、対象範囲を無限定に広げることはせず、必要性や合理性が認められ、緩やかな規制手段がない場合に限ることが求められるとした。

 その上で、学校や児童福祉施設などの設置者はこどもの安全を確保する責務を負っていることを法律で明記し、安全確保の措置や日本版DBSでこどもと接する職員の性犯罪歴を確認する義務を規定すべきだとし、定期的に性犯罪歴を確認する仕組みにすることも考えられるとした。安全確保の措置については、こどもへの性犯罪・性暴力の影響についての研修や防止のための体制整備、早期に被害を発見するための窓口の設置、確認結果を踏まえた適切な措置について報告させることなどを例示した。

 大きな論点の一つとなっていた学習塾やスポーツクラブ、習い事などの、こどもに対して何らかの教授をする民間事業については、できるだけ広く対象に含め規制をかけることが適当だとしつつも、事業者の範囲が不明確で、監督や制裁の仕組みが必ずしも整っていない場合があり、提供を受ける性犯罪歴などの情報を適切に管理することが実効的に担保できるかも不明だとし、制度の対象に含めるようにするためには認定制を設けることが適当だと結論付けた。

 この認定制を設ける場合には、認定事業者には学校の設置者などと同様の安全確保措置を求め、日本版DBSによる確認や、それによって得た情報の安全管理を法律上義務付けた上で、認定を受けた事業者を利用者が分かるように国が公表したり、事業者が認定を受けたことを表示したりできるようにすることが考えられるとした。加えて、こども家庭庁をはじめとする所管省庁が連携して、これらの事業者に対して認定を受けることを促し、日本版DBSが着実に導入されていくようにすべきだとした。

 また、確認の対象とする性犯罪歴などの範囲は、裁判所によって事実認定された前科にすべきだとし、その前科の被害者はこどもに限定しないこと、対象とする前科の期間に一定の上限を設けること、迷惑行為防止条例や青少年健全育成条例を含めるには技術的な課題があり、さらなる検討を要するといった考え方を示した。

 報告書案は大筋で了承され、字句の修正は内田貴座長(早稲田大学特命教授、東京大学名誉教授、弁護士)に一任された。

 内田座長から報告を受けた小倉将信こども政策担当相は「こどもの安全・安心を確保するため、私自身もDBSの対象事業者はできる限り幅広くすべきだと考えている。こうした観点に立って、こども家庭庁としては、今後取りまとめられる報告書の内容を踏まえ、法律案の作成を早急に進めていきたい」と、次の国会での法案提出に改めて意欲を示した。

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