政府の「こどもの自殺対策に関する関係省庁連絡会議」は9月5日、第5回会合を開き、6月に取りまとめた「こどもの自殺対策緊急強化プラン」を踏まえた関係省庁の来年度予算の概算要求の関連事項など、強化プランの進捗(しんちょく)状況を確認した。議長の小倉将信こども政策担当相は、文科省が新たに取り組むGIGAスクール構想の1人1台端末を活用した「心の健康相談」の導入推進や、厚労省が進める各都道府県を対象とした「こども・若者の自殺危機対応チーム」の設置拡充などを評価。各省庁に対して、地方自治体に向けてこれらの概算要求の内容を丁寧に説明するよう求めた。
関係省庁連絡会議では昨年にこどもの自殺が過去最多となったことを受けて、6月の前回会合で「こどもの自殺対策緊急強化プラン」を取りまとめており、その後に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太の方針)にもその内容が反映されている。
この日の会合では、関係省庁が来年度予算の概算要求で盛り込んだ自殺対策の関連事項について報告。こども家庭庁では新たに警察や学校、地方自治体が保有する自殺に関する統計や関連資料を集約し、多角的な分析を行う調査研究や小中学生をターゲットとした訴求力のあるコンテンツの発信などの広報啓発活動に力を入れる。合わせて、自殺対策室の体制も強化するため、専任の管理職、職員の配置に向けた機構定員要求も行っている。
文科省では1人1台端末を活用した「心の健康観察」の全国の学校での導入推進(Listen=Learn and Increase Self-awareness To Ease the Nerves with GIGA device)に新規で約6億円を計上。アプリなどによる心の健康観察によって児童生徒のメンタルヘルスの悪化やSOSを早期に把握し、問題が表面化する前から積極的に支援につなげていくことで未然防止を図る。この他にも▽保護者への相談支援やアウトリーチなどの地域の総合的拠点機能形成▽自殺予防教育の指導モデル開発▽心理・福祉に関する教職員向けの研修プログラムの開発――などを新たに打ち出し、学校へのスクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)の配置も充実させる。
また、厚労省は都道府県に、自殺未遂や事象行為の経験があるこども・若者への対応が市町村などで困難な際に、助言を行う多職種連携の「こども・若者の自殺対策危機対応チーム」を設置する都道府県を増やすための予算を拡充する。
各省庁からの報告を受けて小倉担当相は「(9月10日からの)自殺予防週間を前に、こどもの自殺対策に関する取り組みの重要性について、改めて認識を共有することができたと思う。概算要求についても関係省庁でしっかりと対応いただき、かなりの拡充をすることができたと考えている」と評価。「地方自治体や学校にこの予算をしっかり活用していただかなければ、せっかくこうして計上した予算も絵に描いた餅に終わってしまう。各省庁は今回の概算要求の内容を地方自治体に丁寧に説明してもらえればと思う。私自身も関係する大臣と相談した上で、この概算要求に盛り込まれた事業、特に自殺危機対応チームの設置を呼び掛けるメッセージを発送したいと考えている」と、地方自治体への理解の浸透に取り組む姿勢を示した。