緊急提言を報告、「働きがい創出が必要」との声も 中教審分科会

緊急提言を報告、「働きがい創出が必要」との声も 中教審分科会
特別部会の緊急提言などについて意見交換する参加者たち(YouTubeで取材)
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 中央教育審議会の初等中等教育分科会と「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会」は9月7日、合同会議を開催し、同分科会が「働き方改革」の推進に向けて設置した別の特別部会による8月末の緊急提言について意見交換した。参加者からは、提言の内容をおおむね評価する声が相次ぐ一方、現場教員の声をすくい上げる形で働きがいを創出しながら「働き方改革」を進めたり、高校・私学などの負担軽減策についても議論したりする必要があるとの意見が出た。

 8月28日に公表された緊急提言は、2019年1月に中教審が示した「基本的には学校以外が担うべき業務」「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」「教師の業務だが、負担軽減が可能な業務」の3分類に基づいて業務の見直しを徹底する▽文科省が学習指導要領に基づいて定めている標準授業時数を大幅に上回るカリキュラムを編成している場合、見直しを前提に点検を行う▽ICT(情報通信技術)を活用して業務の効率化を進める――などの対応を求めた。予算措置が必要となる具体策としては、小学校高学年の教科担任制の強化や「教員業務支援員」の全校配置、主任手当・管理職手当の増額などを提言した。文科省が緊急提言の2日後に公表した24年度予算の概算要求には、こうした項目が盛り込まれた。

 東京都の教育委員を務めている宮原京子委員(ファイザー取締役)は、副校長や教頭の業務を補佐する「副校長・教頭マネジメント支援員」の配置が緊急提言や概算要求に盛り込まれたことを評価した。既に同様の仕組みを導入している東京都では一定の効果が上がっているとして、「短期的には経験の浅い副校長や教頭の業務の効率化を図るという意味で良い施策だ」と語った。一方、「人が増えると、なかなか根本的に業務が見直されなくなる懸念もある」とも述べ、中長期的な業務の効率化に向けた議論を続けていくことが大切だとした。

 全日本中学校長会長の齊藤正富委員(東京都文京区立音羽中学校長)は「働き方改革」の在り方について、「上から降りてきた取り組みに加え、教員から吸い上げた取り組みによって勤務時間の短縮と同時に働きがいの創出を考えていく必要がある」と指摘。「3分類を実践すると同時に、教員の主体的な取り組みを実現させることを校長は考えなければならない」と述べた。また、「『働き方改革』の実効性を高めるには、教委や学校だけで行うことは難しい。首長部局のリーダーシップに期待している」と語った。

 日本医師会常任理事の渡辺弘司委員は、「働き方改革」を進める上では単に勤務時間を減らすだけでなく、精神疾患による休職を減らすという観点から、小規模校にも産業医の配置を進めていくべきだと主張した。全国高校長協会長の石崎規生委員(東京都立桜修館中等教育学校長)は、緊急提言が授業時数の削減や学校行事の精選を掲げたことは理解しつつも、「授業を減らしたり、行事を減らしたりすることで『働き方改革』を進めるという誤ったメッセージとして受け取られないようにしてほしい。(教員だけではなく)働いている人はみんな大変なんだというメッセージにしないと、なかなか理解が得られない」と注文を付けた。

 また、石崎委員も含め、就学前や高校、特別支援学校、私学の教育に精通している有識者からは、公立小中学校に限らず、より幅広い観点で学校や教員の負担軽減について議論するよう求める声が上がった。

 この日の合同会議では、地方教育行政の充実に向けて設置されていた文科省の有識者会議の報告書や、「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会」の傘下で高校教育の在り方について話し合ってきたワーキンググループが8月末に示した議論の中間まとめも報告された。

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