文化部活動の地域移行で事例集 複数校で指導者共有やICT活用

文化部活動の地域移行で事例集 複数校で指導者共有やICT活用
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 教員の負担軽減や少子化の影響を踏まえ、国が進める中学校の文化部活動の地域移行を巡って、文化庁は9月19日、実践研究に取り組む自治体の2022年度の活動をまとめた事例集を公表した。地域移行するに当たり懸念されていた指導者の確保や活動場所の管理などについても、各自治体の取り組みを具体的に紹介した。特に文化部活動の中でもニーズの高い吹奏楽部では、複数校で専門講師を共有する事例や、ICTを活用して県内外の指導者に指導を受ける事例が挙げられた。

 事例集では、休日の部活動の地域移行に向けた課題を洗い出す「地域部活動推進事業」32事例と、地域の文化施設や文化芸術団体が主体で生徒の活動を支える「地域文化倶楽部(仮称)創設支援事業」59事例を紹介。

 「地域部活動推進事業」に取り組む秋田県大館市では、市内の9中学校(部員159人)の吹奏楽部で専門講師(全体合奏・管楽器・木管楽器・打楽器の各指導者)を共有して、指導を受けられる体制をつくった。また地域の社会人吹奏楽団から見守り指導者を学校に派遣。運営に関わりながら指導方法を学び、将来の地域指導者の育成につなげる取り組みを進めている。

 同じく、新潟県胎内市では市立中条中学校(部員30人)と市立黒川中学校(部員8人)の吹奏楽部を統合し、それぞれの学校の音楽室で合同部活動を実施。指導経験の豊富な中規模校の顧問と経験の少ない小規模校の顧問が連携したことや、地域の外部指導者が来校して指導することで、顧問の負担軽減につなげている。さらに県の吹奏楽連盟が制作した動画や、県外の指導者のリモート指導を取り入れるなど、ICTを効果的に活用して質の高い指導を受けられるよう工夫する。

 これらの報告を踏まえ、事例集では指導者の確保や活動場所の管理など地域移行に伴う課題を改めて整理した。

 指導者については、▽専門性を有する指導者、吹奏楽のパート毎の指導者の継続的な確保▽受け皿団体の確保▽顧問と地域指導者の連携や指導方針の共通認識――を挙げた。活動場所については、学校以外の場合は▽生徒、楽器の移動(保護者による送迎、バス借り上げ)▽施設使用料の発生――。学校を利用する場合は▽校舎、会場の解施錠のための顧問対応の発生▽学校施設の利用、管理方法の明確化――とした。また財源を巡っては、▽保護者負担の適正な金額の設定、保護者の理解▽指導者などに対する適正な謝金単価の設定▽運営経費、指導者謝金、施設使用料の財源確保――を指摘した。

 一方、「地域文化倶楽部(仮称)創設支援事業」では、元小学校教員などが指導する小中学生合同の「観音寺マーチングバンド『Humming Wind』」(香川県観音寺市)や、演劇部のない区内の中学校に通う生徒が演劇活動に取り組む「(公財)せたがや文化財団」(東京都世田谷区)などを取り上げた。

 文化部活動の地域移行を巡っては、昨年12月に示された「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」で、23年度から3年間を「改革推進期間」と位置付け、休日の部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行について、地域の実情などに合わせて可能な限り早期に実現するよう求めている。同庁では、21年度よりモデル事業を実施している。

 事例集の全文はこちらから確認できる。

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