教員の働き方改革や少子化の影響を見据え、国が進める中学校の部活動の地域移行を巡り、スポーツ庁は9月19日、運動部活動の実践研究に取り組む自治体の2022年度の活動をまとめた事例集を公表した。地域移行するにあたり懸念されていた、休日と平日の一貫した指導の実現や指導者の負担軽減、短時間で効果的な活動の在り方などについて各自治体の取り組みを紹介。オリジナルハンドブックやコミュニケーションアプリを活用して地域の指導者と学校が連携を図る事例や、スポーツ医・科学の知見やICTを活用し短時間で効果的なトレーニングに取り組む事例を取り上げた。
同庁が進める実践研究では▽休日の部活動の段階的な地域移行▽合同部活動▽短時間・効果的な活動の推進――の3つの分野に分け、各自治体が地域と連携しながら運動部活動を運営する上での課題を洗い出している。事例集では浮かび上がった課題に対し、各自治体がどのような対策を取っているかについて具体的に紹介した。
例えば、市教育員会が運営主体となり、大学やスポーツ少年団と連携し指導者を確保し、休日の地域クラブ活動を実施する神奈川県秦野市(実践研究9校、11部活動、3種目)。「秦野市地域部活動指導ハンドブック」を作成し関係者との共通理解を図り、平日と休日の一貫した指導の実現を目指す。ハンドブックでは部活動の教育的意義や学校教育上の位置付けを説明するほか、指導者である「地域部活動支援協力者」の役割や業務内容についても明記する。
同じく埼玉県白岡市(実践研究4校、10部活動、10種目)では、教員や地域の指導者がコミュニケーションアプリで連絡を取り合い、平日と休日の一貫した指導の実現を図る。同市では教育委員会が委託する民間業者が主体となり、元教員や元スポーツ選手などを指導者として招き、休日の地域スポーツクラブ活動を実施する。指導者の確保や研修などは民間業者が担い、民間のノウハウを積極的に活用するのが特徴。また、指導者と教員、保護者の連絡にはコミュニケーションアプリ(BAND)を活用し、密に連絡を取り合える環境をつくり、平日と休日の指導に違いが生まれないよう工夫する。
ICTを活用して短時間で効果的な部活動の在り方を探るのは、栃木県(実践研究5校6種目)。県のスポーツ協会が主体となり、スポーツ医・科学の知見を踏まえた短時間で効果的なトレーニング動画素材を作成し、競技を問わず全ての運動部活動で活用できる仕組みをつくった。また顧問が専門外の部活動などに対して専門家がリモートで指導するほか、ICTを活用して練習を記録し生徒が自主的に振り返りをできる環境を支援する。
事例集では他にも、地域スポーツクラブが活動する上での責任の所在の明確化や、保護者や地域に向けて効果的に情報発信する手法など、幅広い懸念点について参考になる事例を紹介する。
部活動の地域移行を巡っては、昨年12月に示された「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」で、23年度から3年間を「改革推進期間」と位置付け、休日の部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行について、地域の実情などに合わせて可能な限り早期に実現するよう求めている。同庁では、21年度よりモデル事業を実施している。
事例集の全文はこちらから確認できる。