盛山正仁文科相は9月25日、21世紀の半ばを見据えた大学教育の姿を検討するよう中教審に諮問した。急速に進む少子化を踏まえ、大学の再編や規模の適正化、国公私立の役割分担などについて議論するよう求めた。
大学教育の在り方を巡っては、中教審が2018年11月、2040年を見据え、社会人や留学生の受け入れ拡大、大学間の連携促進などを求める答申を出し、文科省もこれに沿った改革を進めてきた。1つの国立大学法人が複数の国立大を傘下に収めて運営できる「アンブレラ方式」を導入したほか、国公私立の枠組みを超えて大学同士で単位交換などがしやすくなる「大学等連携推進法人」を制度化するなど、大学間の連携・再編を進めやすくする制度を整えた。しかしその後、国内の出生数の減少が想定を上回るスピードで進行し、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う留学生の減少やオンライン授業の普及など大学を取り巻く環境も大きく変化したことから、改めて議論する必要があると判断した。
文科省の推計によると、外国人留学生数が「コロナ禍」前の19年度と同じ水準だと仮定した場合、40年度の4年制大学の入学者数は22年度比で約2割減の約51万まで落ち込み、50年度までの10年間は50万人前後で推移する見通しだ。22年度の全国の大学入学定員(62万6532人)に対して入学者が10万人以上も下回ることになるため、現在の大学数を維持していくのは困難だと考えられている。
一方、日本私立学校振興・共済事業団が8月に公表した私立大(短大を含む)の志願動向によると、22年度は入学者ベースで600校中320校(53.3%)が定員割れしている。特に地方の小規模な大学が厳しい経営を強いられている。ただ、地方自治体には「地元から大学がなくなれば、今以上に若者が流出する」との危機感があり、「地方創成」と「淘汰圧」の間で難しいかじ取りが求められている。
盛山文科相はこうした事実を踏まえ、「わが国の高等教育は歴史の転換点に立っている。人材育成と知的創造活動の中核である高等教育機関は一層重要な役割を果たすことが求められている」と指摘。中教審に対し、①40年以降の社会を見据えた大学が目指すべき姿②大学の再編・統合が避けられない中での地方における大学教育へのアクセス確保③国公私立の役割分担の方向性④財源の確保も含めた機関支援や学生支援の在り方——の4つの論点を諮問した。
委員からは「入学倍率の低い大学の予算を入学希望の多い大学に再配分することが必要ではないか」「それぞれの大学が自分たちの持っている強みや特長を明確にし、選ばれる大学を目指していくことが本質論だ」といった意見が出た。今後は大学分科会を中心に議論を進める。