厚労省は10月2日、小学生は9時間以上、中高生は8時間以上の睡眠を確保することを推奨する「睡眠指針」の改訂案を示した。子どもの推奨睡眠時間が明記されたのは初めてで、スマートフォンなどのデジタル機器に触れるスクリーンタイムを減らして体を動かすなどの、生活習慣における注意点も提示した。
科学的な根拠に基づき、睡眠に関する基本的なポイントを解説した「健康づくりのための睡眠指針」について、厚労省では年内を目指して約10年ぶりの改訂を行う予定で、そのための検討会を立ち上げていた。10月2日に開かれた第2回会合で示された改訂案では、新たに成人、子ども、高齢者に分けて年代別の推奨事項を整理。これまでの研究などに基づき、健康指導実施者が睡眠に関する取り組みを推進する上での参考情報を充実させた。
子どもの睡眠については、国際的な推奨基準とされている米国睡眠医学会の知見に基づき、1~2歳児は11~14時間、3~5歳児は10~13時間、小学生は9~12時間、中高生は8~10時間の睡眠時間を確保することを推奨。乳幼児期は子どもの睡眠習慣が親の睡眠習慣に影響されやすいため、家族で早寝早起きの習慣を心掛けることや、小学生以降は早起きの習慣を保った上で、推奨睡眠時間から逆算して就寝時刻を決めることを勧めている。
また、夜更かし朝寝坊の習慣が長く続くと朝起きるのが難しくなり、遅刻の増加や登校の困難などにつながりやすく、睡眠障害を引き起こすことになると指摘。その予防策として▽起床してから日中にかけて太陽光をたくさん浴びる▽朝食をしっかり取る▽スクリーンタイムを減らし、体を動かす▽寝床ではデジタル機器の使用を避ける――などの生活習慣上の注意点を挙げている。
ショートコラムでは、子どもの睡眠時間を確保する目的で海外では学校の始業時刻を遅らせる試みが行われていることを紹介。日本の子どもの就寝時刻は海外と比べて1時間以上遅いことから、睡眠時間の増加が期待ほど得られず、むしろ課外活動時間の減少やデジタル機器の過剰使用などの弊害が生じる可能性も否定できないとしつつ、子どもの成長・学習に最適な授業スケジュールの在り方を検討する価値があると問題提起している。