音楽科や美術科など学校の芸術教育について課題の洗い出しを続ける文化庁の「文化芸術教育の充実・改善に向けた検討会議」は10月10日、第4回会合をオンラインで開催し、これまでの議論をまとめた中間整理案を示した。芸術教育の本質は「学びのプロセス」にあると整理したほか、ICTの活用や、教員の負担軽減を踏まえた外部人材の活用が必要などとする方向性が盛り込まれた。
中間整理案では、学校の文化芸術教育の課題について▽これからの社会で求められる文化芸術教育の在り方▽本物の文化芸術体験とICTの活用による効果的な学びの在り方▽教員の指導力の向上と外部人材等の活用――の3本柱を掲げ、さらに検討を重ねるべき課題を挙げた。
まず「これからの社会で求められる文化芸術教育の在り方」では、芸術教育の本質は「学びのプロセス」にあると整理した。具体的には、▽芸術系教科等の本質は答えを自分でつくりだしていく学習であり、Society5.0の時代と言われる、これから先の不確実な、見通しがなかなか持ちにくい社会の中でこそ重要▽芸術教育は、作品づくりが目的ではなく、作品を作り上げる過程で、自分なりの見方、考え方を作っていく、答えを作っていくもの――などと指摘。また教育現場にも影響を与えつつある生成AIにも触れ、「生成された絵などがどういう過程を経て出来上がっているか我々には分からない。芸術教育の重要なところは、アウトプットされた最後だけではなく、そのプロセスにどういう学びがあるのかということ。特に表現や鑑賞の学習活動のプロセスを一層重視すべき」とした。
「本物の文化芸術体験とICTの活用による効果的な学びの在り方」では、本物の作品と触れるリアルな学びと、ICTを活用した学びの共存に言及。▽ICTやタブレットを使った学習と、アナログでの学習は選択肢として共存していくことが必要▽ICTの活用と、実物を見たり実際に触れたりする感覚を直接感じ取らせる活動や身体活動とはバランスを取りながら教育活動を展開することが重要――などと整理した。
さらに「教員の指導力の向上と外部人材等の活用」では、▽管理職だけではなく、教員が他の教科との連携をより一層考えることによって、子供たちの資質・能力の育成に大きく寄与するのではないか▽非常勤の教員に対してもオンラインで研修が受けられるなどあればもっと充実していくのではないか――などと、教員の指導力を向上させるための機会の確保が課題として指摘された。一方で、「教員は非常に多忙であり、伝統文化や日本文化の指導に外部人材の協力が重要」などと、外部人材の活用や地域連携を促す方向性も示された。
中間整理案を踏まえて、佐藤太一委員(埼玉県教育局市町村支援部義務教育指導課主任指導主事)は、「現場の教員は授業で精いっぱいの状況で、芸術教科の意味をどう児童生徒に理解させていくのかというところまで行きついていないのが現状だと思う」とした上で、「例えば研修をするのであれば、どういう研修が必要なのか。どういう研修であれば、(多忙な)教員が受けられるのか。どのようにすれば授業に直結できるのかなど、もう少し具体的に考えていかなければならない」と、具体的な実践の方法に踏み込む必要性を指摘した。
また東良雅人委員(京都市総合教育センター指導室長)は、児童生徒が美術館などで本物の作品と触れ合う機会について、「教育課程の中で美術館や博物館などに行く難しさがあれば、(それを解決する)方策について考えるべきだ。また障害のある児童生徒などには、オンラインなど最先端の技術を駆使して、体験できるようにした事例もある」とし、全ての児童生徒に対して芸術教育の環境を整備する必要性を強調した。
検討会議では、この中間整理案を踏まえて今後も議論やヒアリングを重ね、今年度中に最終的な報告書を取りまとめる予定。