児童生徒の対話、心理的安全性の確保を 文科省の調査研究事業で

児童生徒の対話、心理的安全性の確保を 文科省の調査研究事業で
iStock.com/SeventyFour
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 学校で児童生徒が“対話”をしやすくするためには、何が必要か――。学校現場で児童生徒が対話を深めるための環境整備について、文科省は10月9日、調査研究事業の結果報告を公表した。多様な子どもが集う学校では意見の変容が起こりやすく、新たな意見の創発や意見が深まるといった強みがある一方で、教員からの評価を気にして不安を抱くなど、児童生徒の心理的安全性が低くなる懸念が指摘された。これらを踏まえ、教員など大人が事前にルールを設けるほか、対話の目的や結果の活用法について説明し、子どもの心理的安全性を確保する必要性が指摘された。

 調査は一定の対話経験のある小学校と中学校それぞれ1校ずつを抽出し、児童生徒約130人が2度の対話の場を設け、その過程を検証した。大人のファシリテーターなしで、児童生徒は学校生活で感じている問題点や改善案について話し合った。

 結果報告では、学校での対話は多様な子どもが集うからこその強みがあると整理。具体的には▽多様な意見が相互に関係することで意見の変容が起こる▽新たな意見の創発や、意見が深まりを持つ可能性がある▽子ども同士で問いやテーマを理解し合えるように工夫することで、問いへの理解を深めることができ、さらなる意見を生み出す可能性がある――などと示した。

 一方で、すでに一定の人間関係が出来上がっている学校だからこその懸念点も見えてきた。例えば教員の介入がないために戸惑ったり、発表内容を教員から評価されるのではないかと不安に感じたりする児童生徒が見受けられた。また意欲の低い層も含め全員が参加する形式だったため、児童生徒によっては心理的安全性の低い環境となり、緊張感を抱く場面があったという。

 これらを踏まえ、学校での対話を有効にするための方策についても指摘。まず事前に打ち合わせの場を設け、児童生徒の日常の対話環境を確認した上で、心理的安全性を確保するためのルールを提示することを挙げた。また同じく事前に、対話中に参照できる資料を提供することも、児童生徒の心理的安全性を高める上で有効とした。一方で事後のワークを設けると、対話中に出てこなかった意見や論点が複数出てきたとも報告があった。

 さらに同様の取り組みを行う際は、①対話をする目的②対話の結果をどのように活用したいか――の2点を教員などがあらかじめ言語化し、子どもたちに示す必要性も指摘した。

 この調査研究事業名は「子供たちによる『対話』を政策形成過程に反映する方法に関する調査研究事業」で、同省から委託を受けた三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱が実施した。

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