青山学院大学教授で陸上競技部監督の原晋氏が10月19日、マイナビが主催するイベントに登壇し、スポーツ指導者としての在り方について語った。原氏は箱根駅伝を一つの教育ツールとして捉えていると明かし、「勝てばいいという思いだけではいけない」と強調。スポーツ指導を通して、選手たちが社会で生かせる計画力やコミュニケーション力を育むことの重要性を説いた。
イベントでは、今夏の慶應義塾高校野球部の甲子園優勝で改めて注目を浴びた、選手の主体性を生かした指導法や、社会で活躍する人材育成をテーマに登壇者が語り合った。原氏のほか、立命館学園副総長・立命館大学副学長の伊坂忠夫氏らも登壇した。
伊坂氏は中学校や高校の学習指導要領の改訂が契機で、部活動や大学スポーツの指導の在り方も変化する必要性に迫られていると分析。背景には、探究学習が本格的に始まり、生徒や教員が答えのない課題に取り組むなど双方向型の学びが浸透しつつあることが大きいと説明した。その上で「学び方が変われば、教え方も変わる。(スポーツ指導でも)選手自身で学び取って、学び取ったものを指導者と共にディスカッションするようになってきた。一方でそのような対応ができない指導者は、これから伸び悩むのではないか」と、指導者自身もアップデートする必要性を訴えた。
今年で箱根駅伝の指導者として20年目を迎える原氏は選手の自主性を促すために、ミーティングの時間に重きを置き、選手同士でチームや個人の目標を細かく設定していると明かした。これまでは、できなかったことに対する反省やダメ出しが多い傾向にあったが、フィードフォワード(未来にむけた改善策を追求する考え方)を取り入れた仕組みに変えたという。「ダメ出しを受けるのではなく、チームと共に頑張っていこうという精神になってくる。(アドバイスを)伝える側も自分自身の力になる」などと手応えを語った。
また原氏は、指導者と選手いずれも競技の勝ち負けにこだわるだけではなく、視野を広く持った上で、スポーツで培った経験を生かし社会課題を解決することを目指してほしいと強調。
そのため自身は選手の言語化する力を育もうと努めていると明かし、「スポーツ以外の情報に触れたり、成功体験や失敗体験と向き合ったりなどの経験を積んでほしい。話を展開する力や本質を把握する力、自分の経験を交えながら会話する力があれば、社会課題を解決できるのではないか」と語った。