2025度の全国学力・学習状況調査の中学校理科で、1人1台端末を活用したCBT(コンピューター使用型調査、Computer Based Testing)方式を導入する方針を、文科省は10月27日に示した。ネットワークの負荷を軽減させるため、学校ごとに試験日を4日間に振り分けて実施する。動画や音声を使った出題や解答が可能となるほか、解答をビッグデータとして管理できるようになる。小学校では、26年度以降の導入を目指す。同日開催された文科省の「全国的な学力調査のCBT化検討ワーキンググループ(WG)」の今年度初回の会合で、素案が公表された。
全国学力調査のCBT化を巡っては、21年7月に同WGが最終まとめで、25年度以降できるだけ速やかに中学校から先行導入することを提言した。この最終まとめを踏まえて、今会合では25年度以降のCBTやIRT(項目反応理論)導入に関する具体的な工程と方向性を検討する。
同省が示した素案によると、25年度に実施する小学6年生と中学3年生の国語、算数・数学、理科のうち、中学校理科をCBTで実施する。CBTを導入する教科は、次年度以降、中学校で段階的に増やしていく方針。初回に理科を選んだ理由について、「他の教科と比べ実施回数が少なく、1度の調査でより多くのデータを収集する必要性が高いため」とした。
これまで通り筆記方式で実施される国語、算数・数学、小学校理科は25年4月17日に一斉に実施。中学校理科はネットワークの負荷を軽減するために、4月14~17日の4日間で学校ごとに分散して実施する。日時は自治体や学校の都合を考慮した上で、同省が指定する。
新たな方式では複数の問題が用意され、生徒ごとに異なる内容に取り組む。CBTを活用すると音声や映像を盛り込んだ出題や解答ができるため、実験動画などを示した出題も可能となる。同省の担当室長は「(ネットワークの負荷を踏まえた)円滑な実施と、CBTのメリットを生かした出題のバランスを見極めながら検討していく」と慎重な姿勢を示した。
結果の提供についても形式が変わる。これまでの正答数や正答率をベースにしたものから、IRTに基づき算出されたスコア(IRTスコア)の分布をベースにしたものに切り替わる。またIRTに基づく調査は、問題を繰り返し使用するため非公開とするのが原則だが、全国学力調査では一定数の問題について「授業改善のメッセージを伝える問題として公表する」方針を示した。また非公開のものについても、全体の回答状況から分かる生徒の学習状況を可能な限りフィードバックするという。
同省が示した方針を受けて、委員からは▽生徒が回答などの操作に慣れるための手立て▽システムトラブルが起きたときの救済策▽IRTスコアの読み解き方の説明▽CBT・IRTを導入する上で教育委員会や教員への説明、情報提供――などを中心に懸念点が示された。
WGでは関係者からのヒアリングや議論を重ね、今年度内をめどに25年度の具体的な実施方式を取りまとめる方針。
委員は次の通り(敬称略)。▽石田達樹(公益社団法人医療系大学間共用試験実施評価機構事業部理事・部長)▽礒部年晃(福岡県筑紫野市立原田小学校校長)▽宇佐美慧(東京大学大学院教育学研究科准教授)▽大津起夫(独立行政法人大学入試センター参与・名誉教授)▽川口俊明(福岡教育大学教育学部准教授)▽澤田真弓(独立行政法人国立特別支援教育総合研究所研修事業部上席総括研究員)▽柴山直(東北大学大学院教育学研究科教授)▽寺尾尚大(独立行政法人大学入試センター研究開発部准教授)▽三浦登志一(山形大学学術研究院 教授)