子どもの放課後の居場所を充実させることをテーマに11月14日、オンラインシンポジウムが開催され、東京都三鷹市と北海道安平町が先進的な取り組みを報告した。三鷹市は、市教育委員会や地域住民が主導し小学校を放課後の児童の居場所として開放し、教員の働き方改革にもつなげた事例を紹介。一方、安平町はデジタルアートで知られるチームラボが設計に携わった学校施設を起点に、放課後を含めた地域に開かれた学校づくりに取り組んでいるという。
三鷹市では「学校3部制」構想を掲げ、①学校教育②放課後③地域活動――の3つの視点から学校の運営体制の見直しを進めている。放課後については、学校施設を児童の居場所として開放する取り組みに注力している。市教委やコミュニティ・スクール委員らが主導し、地域住民やNPOと協力しながら、教員が関わらない体制の構築を実現しているという。
放課後になると全ての教室を開放。子どもたちは学校施設を活用して、工作やスポーツなどさまざまな活動に取り組む。一方で教員は職員室や空き教室などで、休憩をとったり、教材研究をしたりなどに時間を費やすことができる。万が一、けがなどトラブルが起きたときも、市教委などが対応するという。
同市の貝ノ瀬滋教育長は、学校と地域の連携について「校長や教委のリーダーシップが必要。学校は子どもだけ、教員だけのものではなく、市民の財産だと理解してほしい」と強調した。
一方、安平町は長年過疎化や少子という課題を抱えており、町を挙げて子育てと教育に注力する背景がある。
今年4月には義務教育学校の町立早来学園が開校。空間設計はチームラボが担当し、斬新なデザインやICTを積極的に取り入れ、児童生徒の学習環境としての機能を維持しつつ、地域のコミュニティセンターとしての役割も担っている。例えば平日の図書室を見てみると、広い室内には児童や教員のほかに、大きなソファーに腰掛け談笑する地域の高齢者の姿があるという。また調理室では、子育て支援の一環で乳幼児の保護者に向けた料理教室が開催されている。施設内の壁の多くはガラス張りになっており、学校の様子を地域住民が見ることもできる。
放課後児童クラブでは、このような学校施設を活用しながら、クラブのスタッフだけでなく学校の職員や地域住民などと関わり合いながら、多様なプログラムを実現している。
また安平町では、放課後児童クラブや保育園など学校以外の子どもと関わる機能を一つの法人に集約させて、学校と連携を取りやすい仕組みを取り入れている。町教委子育て・教育総合専門員の井内聖氏は「公立学校がすぐに変えることは難しい。しかし放課後にも子どもはいる。地域(放課後)と学校の協働で子どもを育て、町をつくっていきたい」と述べた。
フォーラムを主催した放課後NPOアフタースクールの平岩国泰代表理事は「放課後は学校の時間と違い、時間割がないので好きなことに没頭できたり、いつもと違うメンバーと関われたりするところに価値がある。子ども自身が複数の選択肢の中から選べる環境が、放課後の質を高める重要なポイントの一つだろう」とまとめた。