オンライン学習の要件、自治体で判断する仕組みを 規制改革WG

オンライン学習の要件、自治体で判断する仕組みを 規制改革WG
オンライン学習の在り方について議論するWG=YouTubeで取材
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 オンライン学習の在り方について、政府の規制改革推進会議は11月20日、働き方・人への投資ワーキンググループの第2回会合で議題に挙げ、委員の慶應義塾大学総合政策学部教授の中室牧子氏や横浜創英中学・高校校長の工藤勇一氏らが議論した。委員からは国の規制が学校現場の実態に則していないなどと、自治体や学校単位で判断できる仕組みを求める意見が相次いだ。特に遠隔授業の際、受信側の教室に教員を配置する要件について、過疎地域の小規模校や教員不足が深刻な学校では実現が難しいという指摘が目立った。

 会合に参加した河野太郎デジタル相は「オンライン学習が進まない理由について、自治体からはいまだに活用が阻害されているという声が上がっている。文科省は規制をしっかり改革し、オンライン授業の頻度や中身について、現場の教職員や学校の創意工夫を十分に生かせるようにサポートすることが求められている」と述べた。

 遠隔授業を巡り文科省は、高校について、過疎地域にある小規模校などで実施する際、教員数などの理由で受信側の教室に教員を配置できない場合は、一定の基準のもと教員に代わる職員を配置することを許可し、要件を弾力化した。一方、義務教育段階の小学校と中学校では、原則として受信側に教員を配置するよう求めている。

 委員からは、オンライン学習や遠隔授業の要件を自治体や学校単位で判断できるよう意見が相次いだ。

 中室委員は社会全体で深刻化する人手不足の影響を踏まえ、「人手不足は教員のマーケットにも影響している。文科省の教員を増やしていくという意見はもっともだが、実現の見込みはあるのか。特に地方では非常に切迫した状況で、(どの業界でも)それをテクノロジーで解決しようとしている局面だ」と強調。

 その上で学校現場について、「子どもたちの状況を少しでも良くする、『ベターオフ』することが大事なのではないか。教員のなり手が十分にそろっている理想的な状況と比べるのではなく、教員不足などの理由で受信側に教員を配置できないケースにどう対応するかを議論するべきだ。また現状のような複雑な制度にするのではなく、各自治体の判断で子どもたちをベターオフする環境をつくるというのが合理的なのではないか」と述べた。

 また工藤委員は、授業の質を担保するための規制の在り方について言及。

 「日本の学校教育の問題点は、(授業を)履修したかどうかの入り口のチェックに陥り、非効率になっているところ。海外では(学力を)習得したかという出口のチェックを重視しており、オンラインをどんどん取り入れながら学習を効率的に進めている。児童生徒の習得状況を重視する場合、(オンライン学習を)授業と見なすかどうかの判断は、間近で見ている現場の校長がするべきではないか」と、現場主導で柔軟に判断できる体制の必要性を訴えた。

 これらの指摘に対し、同省の担当者は「文科省が全国の学校全てについて、それぞれ判断するのは難しい。現場に近いところで柔軟に判断していく考え方もあると思う。全体的な考え方の骨格を変えずに、自治体の考え方に柔軟性を持たせるというのは必要だと思う。どこにどの程度の柔軟性を持たせるかについては、考えていかなければならない」との見解を示した。

 一方、オムロン取締役会長の山田義仁委員は「文科省は地方の声を真摯(しんし)に聞くつもりはないのかという印象を受けた」と厳しく指摘。「少子高齢化や人手不足が進む地方では、国民の教育を受ける権利がおびやかされているところもある。今後も状況はさらに悪化することが予測される。このような地方の実状に対して、どう対応するかを議論するべきだ」と、特に過疎地域の小規模校でオンライン学習の普及が喫緊の課題であることを強調した。

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