友達と協力して、新しいものを生み出す楽しさを——。神奈川県小田原市立新玉小学校(岩田真由美校長、児童144人)は6月から、(一社)プレイキッズシアターのむらまつひろこさんらを講師に迎え、1年生から4年生が演劇的手法を用いたワークショップに取り組んできた。1年生はこのほど、保護者を招いた発表会を行い、友達と協力して遊園地のアトラクションを身体で表現する活動に挑戦した。
同校は文化庁「文化芸術による子供育成推進事業」のコミュニケーション能力向上事業に応募。講師のむらまつさんらが、各学年の担任と事前の打ち合わせを重ねながら、ワークショップに取り組んできた。
1年生16人の担任である志澤尚紀教諭は「幼児期をコロナ禍で過ごしてきた影響もあるのか、人前で発表することや、コミュニケーションに少し不慣れなところがある」と、普段の様子について相談。入学当初は「これやってもいいのかな?」と周りを伺ってしまう様子も見られていたといい、「表現活動を通して、人前で表現することが楽しいと思ってくれたり、友達と一緒に何かをすることを楽しんだりしてほしい」と話す。
こうした子どもたちの実情を踏まえ、最初に行われた6月のワークショップでは、主に個人で身体を使って表現する活動を行い、10月のワークショップでは友達と一緒に身体で表現する活動を取り入れていった。むらまつさんは「徐々にグループ活動も取り入れていくことで、話し合いもスムーズにできるようになっていった」と子どもたちの成長を説明する。
そして最終回となった11月16日には、友達と協力してゼロから何かをつくる喜びを体験しようと、保護者も招いての発表会が行われた。
子どもたちはまず「声だしじゃんけん」や忍者の表現遊びなどでウオーミングアップした後、3人組で身体を自由に使って「〇」を表現する活動にチャレンジした。躊躇(ちゅうちょ)なく、動きながら次々といろいろな〇を考えていく子どもたち。全員が寝転がってつながって〇をつくるグループや、開脚した足をつなげて〇をつくるグループなど、さまざまな〇が完成すると、保護者からは拍手が沸き上がった。
ここからはさらに難しい表現活動に入っていく。3つのグループに分かれ、くじ引きで割り当てられた「ジェットコースター」「観覧車」「コーヒーカップ」のいずれかを、協力して身体で表現していく。
「どうする?」と話し合って考えていくグループもあれば、とにかく身体を動かしながら考えていくグループも。「こうやってみない?」「いいね!それでやってみよう」と、それぞれの意見に耳を傾け、迷ったら大人の意見も取り入れながら、表現方法を固めていった。
何のアトラクションかは伏せた上での発表タイムでは、目いっぱい、身体を動かしながら各グループが表現。「あ、分かった! ジェットコースターじゃない?」「正解!!」と、子どもたちは当てたほうも、当てられたほうもうれしそう。自分たちがつくり上げた表現が見ている人に伝わる経験に、笑顔があふれていた。
3回のワークショップを通して、志澤教諭は「普段は目立たないタイプの児童が生き生きと積極的に取り組んでいる姿に、驚きとうれしさを感じた」と振り返り、「1年生は普段の活動では『自分が』と個のことが多い。それがこの活動では、自然と子どもたちのほうから『みんなで』という言葉が出てきていて、友達と協力する喜びや楽しさを感じた子が多かったようだ」と話した。
むらまつさんは「表現活動には答えはなく、それぞれの個性が尊重される。人それぞれアイデアや考え方は違う。そして、その違いを大切にしながら、話し合いによって新しいものを生み出す楽しさを伝えたい」と思いを述べた。