0~2歳のこどもを保護者の就労要件を問わずに月一定時間預けることができる新たな通園給付「こども誰でも通園制度」を巡り、全国の政令市で構成される「指定都市市長会」は11月28日、政府の総合経済対策で前倒しが決まったモデル事業について、利用時間を一律に制限せずに、柔軟な対応ができる仕組みにすることを求める緊急提言を行った。提言をこども政策担当の工藤彰三内閣府副大臣に手渡した福岡市の高島宗一郎市長は、国が示している新たなモデル事業の月10時間という上限について「枠を拡大してほしいというニーズがある中で思いきり逆行することになってしまう」と訴えた。
こども誰でも通園制度は今年度、全国31自治体で先行的なモデル事業が行われており、来年度からは全国展開に向けてさらに規模を拡大したモデル事業が行われる予定となっていたが、政府の総合経済対策を受けてさらに早期の実施が可能となるように、今年度補正予算にも91億円が計上されている。この新たなモデル事業についてこども家庭庁では、検討会を立ち上げて具体的な実施方針を議論。その中で補助基準上1人当たり「月10時間」を上限とする方針が示されている。
緊急提言では、こども誰でも通園制度の利用者からのニーズの高さや子育て支援、こどもの成長面での効果を挙げつつ、新たなモデル事業の詳細が自治体に対して明らかになっていないと指摘。▽モデル事業は利用時間に一律の上限を設けず実施するなど、自治体の実情や受け入れ体制に応じて柔軟な対応ができる仕組みにし、十分な財政措置を行うこと▽自治体の予算編成への反映や事業者の保育人材確保などの観点から、速やかに制度の詳細を示すこと▽本格実施に向けて自治体との協議を十分に重ね、保育士の処遇改善や利用者、事業者が混乱しないように、一時預かり事業との違いや関係を明らかにすること――を要望した。
工藤副大臣に面会後、記者団の取材に応じた高島市長は「どこにも通っていないこどもを通わせることができるのは、こども家庭庁としての新しいチャレンジだと思う。福岡市でも今年、3つの施設で試行的に行ったが倍率は3倍以上になって評判がいい」とニーズの高さを強調。その上で「これが来年度に月10時間と制限されると、週に1回2時間預けていっぱいいっぱいだ。2時間では、掃除や洗濯をするのすら間に合わない。枠を拡大してほしいというニーズがある中で思いきり逆行することになってしまう。そういうわけにはいかないと実情を伝えた」と提言の意図を説明した。