地域移行ではなく、学校部活動を今後も継続する━━。熊本市の部活動改革検討委員会は11月29日、会合を開き、同市立中学校で今後も部活動を継続する方針を示した中間報告を遠藤洋路教育長に提出した。中間報告では改革の基本方針として、学校部活動の教育的意義や役割を保持すること、指導者の確保を含む運営体制の充実を図ることなどが示された。国が学校部活動の地域移行を進める中、同市の実情に合わせた独自の方向性を示したことになる。
同市部活動改革検討委では昨年12月から議論を重ねてきており、11月29日に行われた第8回会合で「熊本市立中学校における部活動改革について」の中間報告がまとめられた。
それによると、学校部活動には教育的意義があることや、地域の受け皿の確保が見通せない状況であることを踏まえ、教職員や地域人材で指導を希望するものが指導することを前提に、同市立中学校の学校部活動を今後も継続させる方針を示した。
こうした方針になった経緯について、同市教委の担当者は「熊本市では数年前まで小学校にも部活動があった。それを総合型地域スポーツクラブなどに移行したが、小学生で手いっぱいの状況だ。また、地元企業も人手不足が深刻化している。地域移行するにも、指導者の不足や高齢化、専門性の確保の点で、中学生の受け入れは厳しい」と現状を説明する。また、保護者からも「部活動の教育的意義も感じているし、学校部活動の方が、安心感がある」との意見があったという。一方で、現状のままでは中学校教員の部活動への負担は大きく、「学校部活動を残しつつ、その課題を解決していく方法をとった」と話す。
改革の基本方針には、①こどもたちのスポーツ・文化芸術活動の充実を図る②学校部活動の教育的意義や役割を保持する③指導者の確保を含む運営体制の充実を図る④持続可能な運営費用を確保し、全ての指導者に適正な対価を支払う━━の4つを掲げている。
まず、①については、近隣校での合同部活動などの新たな部活動を設置する。各学校の状況に合わせてモデル事業を実施し、課題の検証を行った上で、全市に広げていく計画だ。また、中学校総合体育大会やコンクールなどの参加規程の見直しも要請していく。
②については、教育的意義を踏まえ、指導は勝利至上主義につながらないよう明確化し、指導方法に関する研修などを充実させ、生徒主体となる仕組みを取り入れていく。
最も大きな課題となっている③については、希望する教職員と地域人材が指導に携わるように体制を整えていく。昨年12月に実施したアンケートでは、中学校の教職員の約6割は部活動への指導を希望していなかった。市教委の担当者は「今後、答申されたタイミングなどで、教職員に再びアンケートや意見交換を実施する予定」としている。また、部活動指導員の配置数が政令市の中では最下位という現状もあり、今後は大学生や市職員などを指導者として確保するための人材バンクを設置する。
④の指導者への対価の支払いについては、教職員も含めて適正な額を設定する。指導にかかわる費用については、公費負担を念頭に置きつつも、受益者負担の在り方についても検討していく。
今後は同委で具体的施策を議論し、来年3月をめどに最終の報告書をまとめ、遠藤教育長に答申する予定。