教員の奨学金の返済免除は「院卒から」 中教審部会で意見相次ぐ

教員の奨学金の返済免除は「院卒から」 中教審部会で意見相次ぐ
奨学金の返済免除などについて議論する教員養成部会のメンバーら=撮影:大久保昂(YouTubeで取材)
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 中教審は12月4日、初等中等教育分科会教員養成部会を開き、新たに教員となった人を対象として日本学生支援機構の貸与型奨学金の返済を免除する案について、初めて議論した。どのような人を対象者とするかに関して、委員からは「高い専門性を持つ教員を確保する観点から、大学院を修了した人をまずは優先したらどうか」という趣旨の意見が相次いだ。今後、数回にわたって議論を続け、免除の具体的な条件の方向性を示す。

 文科省は、全国で深刻化している「教員不足」の解消に向けた取り組みの一環として、戦後長らく続けられた教員の奨学金の返済免除制度を「復活」させることを検討している。早ければ2025年度の新規採用者からの適用を目指している。

 文科省は4日の部会で、小中学校・高校のいずれの校種も、新規採用された教員に占める大学院卒の比率が低下傾向にあることや、18年のOECD(経済協力開発機構)の調査の結果、日本の中学校教員に占める修士レベルの院卒者の比率は10.6%とOECD平均(44.2%)を下回っていることなどを説明した。

 こうしたデータを踏まえ、白水始委員(国立教育政策研究所初等中等教育研究部総括研究官)は、返済免除の対象者について「目的が優れた教師人材の確保であるという点に鑑みると、修士取得者から始めるのがよいと考える」と提案。森山賢一委員(玉川大学大学院教育学研究科教授)も「大学院の修士課程というのが、スタートとしては重要ではないか」と述べた。貞廣斎子委員(千葉大学教育学部教授)や秋田喜代美部会長(学習院大学文学部教授)も、こうした意見に同調した。

 一方、戸ヶ﨑勤委員(埼玉県戸田市教育委員会教育長)は、他の職業との公平性に配慮した結果、制度が廃止された経緯を踏まえ、「『なぜ教師だけなのか』という点を説得力を持って国民に説明できるようにしなければいけない」と指摘。松田悠介委員(認定 NPO法人 Teach For Japan 創業者・理事)も「一度廃止された制度を戻すには相当なエネルギーがいる」との認識を示し、「奨学金の返済義務が教職を選ぶ上でどのくらい足かせになっているのかを把握し、ロジックを固める必要がある」と話した。

 日本学生支援機構の前身である旧日本育英会の貸与型奨学金には、教職や研究職に就いた場合、返済が免除される制度があったが、大学生は1998年度入学者から、大学院生は同機構が設立された2004年度の奨学生採用者から廃止された。自民党や公明党からは制度の復活を求める声が上がっている一方、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が11月20日にまとめた建議は「免除後すぐの離職を防ぐ必要など、解決すべき多くの課題がある」と復活論をけん制している。

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