3.6兆円のこども未来戦略案 貧困や虐待、障害児の支援を拡充

3.6兆円のこども未来戦略案 貧困や虐待、障害児の支援を拡充
会議終了後に記者会見に臨む新藤担当相=撮影:藤井孝良
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 年末までに閣議決定する「こども未来戦略」について、政府は12月11日に開いた「こども未来戦略会議」で戦略案を示した。予算は全体で3兆6000億円規模となる見通しを明記し、財源の一つである支援金制度の具体案や、来年度以降の各施策の実施時期を整理した改革工程案も組み込んだ。新たに、こどもの貧困や児童虐待、障害のあるこどもなど、多様な支援ニーズがあるこどもへの多様な支援拡充策を盛り込んだ。

 戦略案では、6月に閣議決定された「こども未来戦略方針」をベースに、これまでの政策の進展を踏まえた内容の充実や実施時期、法律上の位置付けなどを追記した。

 予算規模の内訳も示され、ライフステージを通じた子育てに関する経済的支援の強化や若い世代の所得向上に1兆7000億円程度、全てのこども・子育て世帯を対象とする支援の拡充に1兆3000億円程度、共働き・共育ての推進に6000億円程度を見込んでいる。一方でこの3兆6000億円の財源は、2028年度までに規定予算の最大限の活用で1兆5000億円、医療・介護制度改革を中心とした歳出改革による公費節減効果で1兆1000億円を確保する。その上で、26~28年度にかけて支援金制度を構築し、1兆円程度の確保を図るが、この間に財源不足が生じないように、必要に応じてつなぎとしてこども・子育て支援特例公債を発行する。

 会議終了後に記者会見を行った新藤義孝全世代型社会保障改革担当相は「これによりわが国の1人当たりの家族関係支出は現在の11%から16%程度になると見込まれる。OECDトップのスウェーデンの水準が15.4%だが、今回の対策によって画期的な前進が図られるのではないかと思っている」と強調した。

 新たに盛り込まれた施策では、貧困、児童虐待、障害児、医療的ケア児、ヤングケアラー、社会的養護、ひとり親家庭などに対するきめ細かな対応を行うこととし、その具体策を書き込んだ。

加速化プランにおける支援強化
加速化プランにおける支援強化

 例えば、こどもの貧困対策・ひとり親家庭の支援では、ひとり親家庭や低所得の子育て世帯のこどもを対象にした地域における学習支援の場を増やしたり、食事や体験、遊びの機会を提供する場を設けたりする。また、こどもが大学進学を希望する場合などに、大学の受験料の補助などを行うとした。

 児童虐待などに関連した対策では、市町村が設置する「こども家庭センター」の全国展開や学校・地域とのつなぎ役を配置するなどにより、家庭やこどものSOSを早期に把握し、必要な支援を届ける体制を整備。虐待などによって家庭に居場所がないこども・若者が必要な支援を受けられ、宿泊もできる「こども若者シェルター」の確保や、虐待や貧困に起因するさまざまな困難に直面している学生向けのアウトリーチ型支援、一時保護施設や児童養護施設の学習環境整備の支援強化などを盛り込んだ。

 戦略案では障害児や医療的ケア児の支援も拡充。地域における障害児支援体制の強化や保育所などにおけるインクルージョンの推進、医療的ケア児を一時的に預かる環境整備や保育所などでの受け入れ体制の整備を打ち出した。さらに、障害児の補装具費支給制度の所得制限についても、補装具は障害児の日常生活に欠かせないものであり、成長に伴い交換が必要なものであることから、撤廃する方針を打ち出した。

 戦略案では、各種施策の中でも主に「出産・子育て応援給付金」「共働き・共育てを推進するための経済支援」「こども誰でも通園制度(仮称)」「児童手当」に充てる財源となる支援金制度について、医療保険料と合わせて徴収することなどを示した具体的な仕組みを示し、歳出改革と経済成長による国民の所得の向上によって、実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築することで、国民に対して実質的な負担が生じないようにするとした。さらに、戦略案に盛り込んだ26年度以降の各施策の改革工程案も示した。

 今後、与党などとの調整も行いながら、政府は年内に開かれる次回のこども未来戦略会議で、「こども未来戦略」として取りまとめる方針。

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