盛山正仁文科相は12月21日、教育新聞の単独インタビューに応じた。教育分野でICTを活用していく必要性を認めつつ、「リアルな体験が大事だ」との認識も示し、教室に来て対面で学ぶことを原則とする考えを強調した。内容が過重になっているとの批判もある学習指導要領の在り方については、「内容を追加するだけではなく、丁寧にやっていたものを軽くしたり、場合によってはなくしたりすることも必要となる」との問題意識を示した。
盛山文科相は、自然に親しめる機会や伸び伸びと遊べる場が減り、スマートフォンが普及するなど子どもを取り巻く社会が変化していることを受け、「環境自体は変えられないが、リアルな体験が大事だ」と述べた。その中で学校が果たす役割について、「子ども同士でコミュニティーを作り、いろいろなやりとりをすることが社会で生きるトレーニングになる。自分で興味を持って学んでいく力や好奇心を伸ばしていくことだ」と語った。
過去最多を更新し続けている不登校の児童生徒への支援を巡っては、GIGAスクール構想によって1人1台のデジタル端末が普及したことを踏まえ、「オンラインである程度カバーできる。学校に行けなくても学びを続ける、先生と対話するといったことをうまくやっていただきたい」としつつ、「教室に来て一緒に学ぶのが基本だ」とも強調した。不登校の児童生徒を含め、一人一人の子どもに合った教育の在り方として、文科省が進めている「個別最適な学び」については「究極はマンツーマンとなるが、それは難しい。限りあるマンパワーや予算でどこまでできるかを考え、それぞれの地域で工夫してやってもらうしかない」と語った。
学習指導要領の在り方に関しては、バリアフリー教育や平和教育の大切さに言及し、「時代によって追加されるものはあると思う」と述べた。一方で「どんどん追加されれば、限られた授業時間でこなすことは無理になる」とし、「今まで丁寧にやっていたものを軽くする、場合によってはなくすことも必要となる」との考えも示した。給特法の改正を含めた教員の処遇改善に向けては、「審議会(中教審)で議論いただいてから、次のステップに進むことになる」と述べるにとどめた。
OECD(経済協力開発機構)が2022年に実施した生徒の国際学習到達度調査(PISA)で、日本は「数学的リテラシー」「読解力」「科学的リテラシー」の全3分野のスコアが前回(18年)より上昇し、新型コロナウイルスの感染拡大にうまく対処した「レジリエントな(回復力のある)国・地域」の一つに認定された。盛山文科相はこの結果の背景に教員の努力があったとして、「慣れないオンライン対応も含め、よく頑張っていただいた」と改めて謝意を示した。その上で、コロナ後の新しい学びと向き合う全国の教員に対し、「うまくICTも活用しながら、対面で生徒と接していただき、学びの充実、進化に取り組んでいただきたい」とメッセージを送った。
インタビューの内容は後日、2回に分けて詳報する。