2022年度に実施した公立学校の教員採用選考試験で採用倍率が3.4倍となり、過去最低となったことが12月25日、文科省の調査で明らかになった。小学校は倍率の低下に歯止めがかからず、前年度比0.2㌽減の2.3倍と4年続けて過去最低を更新した。中学校も同0.4㌽減の4.3倍、高校も同0.4㌽減の4.9倍となり、民間企業の採用活動が活発で教員採用試験が低倍率だった1990年前後のバブル期に近い水準まで下落した。
文科省は「団塊ジュニア世代の就学に対応するために1980年代に採用された教員の大量退職に伴い、採用者数の高止まりが続いている結果、臨時的任用教員や非常勤講師を続けながら正規採用を目指す既卒の志願者が減っているため」と分析している。
小学校では新卒の受験者が3年連続で増加し、1万8066人(前年度1万7484人)となる一方、既卒者は2万886人(同2万3151人)と大きく減少した。中学校も新卒は1万5464人(同1万5063人)と2年続けて増加したものの、既卒者が2万5584人(同2万7524人)に減り、志願者全体では減少に歯止めが掛からなかった。直近で既卒の志願者が最も多かった12年度実施の採用試験(小学校3万9876人、中学校4万3201人)と比べると、小学校は約5割、中学校は約6割の水準まで既卒志願者が減ったことになる。
一方、高校は新卒が6792人(同7104人)、既卒者が1万5671人(1万6887人)といずれも減少した。高校の教員は教育学部以外の出身者が多くを占めることから、人手不足で積極的な採用活動を展開している民間企業に新卒の学生が流れているとみられる。
文科省は既卒者を増やすため、民間企業に勤める社会人が教壇に立つ動きを後押ししている。22年度実施の採用試験の結果、民間企業などの出身者が小中高の教員として計1428人採用された。採用者に占める割合は4.0%と前年度比で0.4㌽上昇した。
採用倍率の低下が続く中、できるだけ多くの志願者を集めようと、採用試験の間口を広げる動きも広がっている。栃木、山口、徳島、長崎、熊本の5県と京都市が出願者の年齢制限を新たに撤廃した。これにより、年齢を問わずに受験できるのは53自治体となり、教員人事権を持つ68自治体(大阪府豊能地区教職員人事協議会を含む)の78%を占めることとなった。
また、夏に実施する通常の採用試験とは別に、「秋採用」などを実施したのは20県市で、前年度の7県市から大きく増加した。県外の試験会場を設ける自治体も、前年度から7自治体増の24県市となった。