10月の「教員不足」は3075人、5月から拡大 全教調査

10月の「教員不足」は3075人、5月から拡大 全教調査
調査結果を発表する全教の幹部ら=撮影:大久保昂
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 全日本教職員組合(全教)は12月25日、公立の小中学校や高校などに本来割り当てられている教員が、担い手の確保が難しいなどの理由で配置されない「教員不足」について、10月1日現在で少なくとも3075人発生しているとの調査結果を発表した。事務職員や特別支援学校の調理員、介助員など教員以外も合わせると、本来配置されるべき職員が欠けているケースは3112人に達した。5月1日現在でも、全国の都道府県などを対象として同様の調査をしており(参考記事:5月時点で少なくとも2082人の「教員不足」 全教調査)、2回とも回答を得られた自治体同士で比較したところ、10月時点の方が教員不足は増えていた。

 全教は、義務標準法や高校標準法が規定している「教職員定数」を満たしていない状態に加え、都道府県や市区町村などの独自の加配措置も含め、各校に本来配置されるべき教員が欠けているケースを「教員不足」と定義。教職員の人事権を持つ都道府県・政令市などの教育委員会に問い合わせたり、組合員に職場の実態を聞き取ったりして、できるだけ多くの教職員の配置不足を把握しようと試みた。今回の10月現在の調査では、32都道府県と12政令市のデータが集まった。

 この結果、小学校で1611人、中学校で765人、高校で281人、特別支援学校で326人、小中一貫校で6人の教員不足が発生していた。残る86人は校種を特定できなかった。こうした欠員のうち、回答時点で補充のめどが立っていたのは8人にとどまった。

「校長が週20コマ授業している」

 3075人の欠員理由の内訳では、出産や育児などによる休職者の代役を補充できないケースが1154人と最も多かった。一方で「教職員定数」を満たすことができていない形の不足数も531人に達していた。自由記述欄では、「校長が週20コマ授業している」「本来6人のところを4人で回している」といった深刻な実態が報告された。

 全教は5月1日現在の教員不足についても調査をしており、22都道府県・4政令市については、5月と10月の両時点のデータを取ることができた。これらの自治体に限定して集計したところ、5月には1637人だった教員不足が、10月には2365人と44%増加していた。特に病気による休職者の代役が見つからないケースが96人から476人へと急増した。全教の板橋由太朗中央執行委員は「5月段階では何とかして埋めていたものが、カバーできなくなっている」としている。

22年同時期と比べても「悪化」

 また、22年10月現在で実施した調査との比較も公表された。2年続けてデータが得られた22道府県・5政令市について集計した結果、教員不足数は22年が1689人だったのに対し、23年は2326人と「悪化」していた。

 深刻化している教員不足の改善策として、全教は教職員の負担軽減に加え、教育予算の充実による教職員の増員や待遇改善が必要だとしている。すぐにできる取り組みとしては、文科省が定めた標準授業時数を上回る「余剰時数」の削減などを挙げ、中長期的には、▽給特法などの見直しによる公立学校教員への残業代の支給▽教員の受け持ち授業数(持ちコマ数)の上限設定▽「3分の1」に引き下げられた義務教育費国庫負担金の国家負担率の「2分の1」への復元――などを求めている。

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