中教審は12月26日、初等中等教育分科会教員養成部会を開催し、新たに教員となった人を対象として日本学生支援機構の貸与型奨学金の返済を免除する案について、2度目の議論を行った。兵庫教育大の加治佐哲也学長と国立教育政策研究所の濱中義隆部長からヒアリングを実施。2人の有識者が、免除の対象者は大学院の修了者とすることが現実的との見解を示したのに対し、複数の委員から「学部卒も対象として考えるべき」との異論が出た。
加治佐氏は学校教育が高度化・複雑化していることを踏まえ、「教員の標準として大学院レベルの学びを求めるべきだ」と主張。そのためのインセンティブとして、大学院の奨学金の返還を免除するよう求めた。学部卒で教員になった人も返還支援の対象とする可能性については、「今後は採用数が減ってくるので、(教員採用試験の)倍率は向上すると見込まれる。他の職種との公平性の観点で、免除の理由を探すのが難しい」と慎重な考えを示した。
濱中氏も、優秀な学生を掘り起こす効果は期待できず、教員のみを優遇する根拠にも乏しいなどとして、学部卒を免除の対象とすることには否定的な見解を示した。一方、大学院修了者を対象とする制度には一定の合理性が認められる可能性があるとし、返済免除ではなく、教員として採用した都道府県を通じ、国費で「代理返済」をする仕組みを提案した。
こうした提案に対し、部会の委員からは異論が相次いだ。
戸ヶ﨑勤委員(埼玉県戸田市教育長)は深刻化する教員不足に言及し、「数年先には自然解消するという楽観的な声も耳にするが、数年先まで待っていられない」との危機感を示した。その上で「一人でも多くの学生に教師を目指してもらえるよう、優先すべきは学部段階からの返済免除の実施だ」と訴えた。
松田悠介委員(認定NPO法人 Teach For Japan 創業者・理事)も「大学院をスタンダードにすると、ハードルになることを危惧する。院生以外への支援もバランスよく議論することが必要だ」と主張。山辺恵理子委員(都留文科大准教授)は「学部の段階で特色ある教員養成をしている大学もある」と指摘した。
一方で、大学院修了者を優先すべきだという意見も。森田真樹委員(立命館大学大学院教授)は「大学院レベルからスタートする制度設計があってもいいのではないか」、森山賢一委員(玉川大学大学院教授)も「まずは大学院から進めるというのは一つの考え方だ」と述べた。