奈良教育大学附属小学校(奈良市)は1月17日、国語や道徳など8教科と外国語活動の授業において、学習指導要領に沿わない不適切な指導が行われ、教科書も十分に使われていなかったとする報告書を公表した。長年の慣行だったとみられるが、いつから始まったかは不明。同校は、2022~23年度分の調査を基に未履修の時間数などを確認した上で、在校生と卒業生に対し、その分の補習を行う。また、教員らをコントロールする仕組みが機能していなかったことが背景にあるとみて、校長を中心とした学校運営に変えるためのガバナンス強化も進める。
報告書によると、不適切な指導があったのは、▽国語▽社会▽理科▽音楽▽図画工作▽体育▽外国語▽道徳――の8教科と外国語活動。学習指導要領で教えるべき内容を扱っていなかった他、授業時数が不足していたり、3年生の内容を4年生で教えたりといった問題が計31項目確認された。
また、教科書を使わずに指導する授業も多く、図画工作では全く使用されていなかった。代わりに独自のプリントなどを用いた指導が行われていたが、学習指導要領の内容を網羅していないものもあった。
昨年4月、同県下市町教育長から転身した小谷隆男校長がこうした不適切な指導に気付いた。改善を図ろうとしたが、校内で合意を得ることができず、奈良県教委に相談して発覚した。同6月には奈良教育大が調査委員会を設置し、教職員への聞き取りなどを進めてきた。
報告書は、長年にわたって不適切な指導が続いてきた理由として、「各教科等の年間指導計画立案が不十分だった」「指導実践や教科書使用に関し、個々の教員及び教員集団が独自の考えに基づいて実施するなど、学習指導要領や教科書使用についての省察がなく、法令に基づいて対応するという前提を失していた」などと指摘している。
また、学校内では教員が職員会議を「最高議決機関」と称し、校長の権限が制約されがちであったことや、21年度まで専任の校長が置かれていなかったことから、同校に長年勤務してきた副校長を中心に、学校を運営する慣行が行われていたことも挙げた。
未履修分の補修については、今年度の3学期以降、在校生と卒業生の両方に対して実施する。在校生に関しては、主に通常授業の時間を使い、内容を重点化するなどして教える。ただ、6年生は3学期の授業だけで補てんすることが難しいため、卒業後の3月や夏季休業中にも補習を行う。
卒業生については希望者に対し、同校での対面補習に加え、オンラインを活用した補習も行う。新しい教科である道徳は18年度以降、外国語・外国語活動は20年度以降の卒業生を対象とするが、その他の教科については対象期間を定めない。
組織改善策としては、職員会議は校長の補助機関であり、議決機関でないことを明確化するとともに、来年度から副校長職を廃止し、校長の命令を受けて校務を整理する教頭のポストを新設する。また、奈良県教委や奈良国立大学機構などと人事交流を実施し、教職員の流動性を高める。奈良教育大もガバナンス強化の一環として、来年度から、副学長級の人材を附属学校の管理運営責任者として新たに配置する。