(提言)自分の力を発揮するために

(提言)自分の力を発揮するために
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三河教育研究会会長 鈴木 佳樹

 昨年9月27日、6年生の担任が校長室に駆け込んできました。私の目の前に広げられたのは、『最近楽しかったこと』と題されたA児の日記です。

 「国語の授業が楽しかったです。少し難しい分、わかったときがすごく楽しいです。今日も授業で、この考えが出てないな、言いたいなと思うときがあって、でも、手を挙げる勇気もないし、手を挙げられたとしても言うことができないので、どうすれば自分の意見をみんなに伝えることができるのかなと考えています。

 あと半年で卒業です。先生やみんなと授業もできなくなってしまいます。だから、それまでに自分の意見をみんなに伝えられるようにしたいです。意見を伝えられるようになれば、6年生が悔いのない充実した1年になると思うからです。みんなは意見を言うのが上手になっていて、私も成長したいので挑戦したいです。

 でも、どうすればよいかわからないので、意見をみんなに伝える方法を一緒に考えてほしいです。お願いします。大きな挑戦もあまりしないので、すごく緊張するし、不安もあります。でも、がんばります」

 場面緘黙症のA児が記した貴い決意に、担任や学級の仲間とともに紡いでいる確かな日常が重なります。

 宇宙飛行士として活躍された山崎直子さんは、チームワークを構成する必要不可欠な能力を問われ、状況把握能力、リーダーシップ、フォロワーシップ、そして4つ目に自己管理能力を挙げています。

 自己管理能力について、山崎さんは、心身の自己管理だけでなく、「自分が大変なとき、いかに的確に助けを求めることができるか」という力も含めた能力と考えています。

 広大な宇宙においては、一人だけで問題を抱え込んでいると、チーム全員の生命にも影響を及ぼしかねないからです。

 自分が大変なとき、自分から周囲に的確に助けを求めることができる力も大切な自己管理能力であるという考え方に、とても勇気付けられたことを憶えています。

 私たちは、人との関わりの中で成長していきます。これから先、社会というチームで自分の力を豊かに力強く発揮していくために今、A児は大きな一歩を踏み出しました。それを支える担任と学級の仲間、そして何よりA児自身の挑戦は続きます。

 (安城市立桜井小学校長)

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