採用試験の受験が条件の愛知県・名古屋市の教育実習 見直しへ

採用試験の受験が条件の愛知県・名古屋市の教育実習 見直しへ
iStock.com/kazuma seki
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 愛知県教育委員会が、県内の公立小中学校(名古屋市は除く)で教育実習を希望する学生を受け入れる際、原則として同県の教員採用試験を受けることを条件とし、本人の意思を確認していたことが1月30日、県教委への取材で判明した。他の自治体を受験予定の学生についても、柔軟に受け入れていたものの、県教委は「誤解を招く恐れがある」と判断。2024年度の受け入れ学生からは、こうした条件を撤廃した。名古屋市教委も市立小中学校での実習受け入れを巡って、同様の仕組みを採用しているといい、見直しを検討している。

 名古屋市以外の愛知県内の公立小中学校で教育実習を希望する場合、学生たちは大学を通して県教委に申し込む仕組みになっている。県教委は各大学に対し、受け入れ条件などを要項で示しているが、その中に「原則として愛知県教員採用試験を志願する者」などと明記していた。こうした条件を課すようになった時期は不明だが、県教委は「約10年前にはあった」と説明している。

 県教委は各大学に対し、実習で受け入れた学生のうち何人が愛知県の採用試験を受けたかについて、事後的に報告させていた。ただ、仮に愛知県の試験を受けなかった学生がいたとしても、大学側や学生個人に対するペナルティーなどはなかったという。また、他の自治体で採用試験を受ける予定の学生についても、相談に応じて可能な範囲で受け入れていた。

 愛知県教委の担当者はこうした条件を設けた理由について、「はっきりしたことは不明」としつつ、「教育実習の希望者全員を受け入れることが、キャパシティーの観点で難しかった時期がある。何らかの線引きをする目的だったのではないか」と話す。

 一方、名古屋市教委も市立小中学校で教育実習の学生を受け入れる際、同市の教員採用試験を受ける条件を課していた。少なくとも約20年前から続いているという。市教委の担当者は「志を持った人に実習に来てもらいたいという趣旨だった」と説明。今後は見直しを検討する。

 愛知県教委と名古屋市教委の対応について、盛山正仁文部科学相は同30日の閣議後記者会見で「採用試験を受験する地域にかかわらず、教師を目指す学生に対して(教育実習の)機会を確保することが重要だ」と苦言を呈した。他の自治体でも同様の事例がないかどうかを確認することについては「考えていない」と述べた。

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