スロースタートでいこう 新年度の準備(喜名朝博)

スロースタートでいこう 新年度の準備(喜名朝博)
【協賛企画】
広 告

 学校の年度末は慌ただしい。学年のまとめや年度末の事務処理に加え、卒業式が控えている。同時並行して教育計画の作成を中心にした新年度準備も始まる。宿題のない春休みは、子どもたちにとってウキウキ気分だが、教職員にとっては気が休まらない。特に異動が決まっている教員は、全てを年度内に終えなければならず、時間に追われる。

東京都墨田区 入学式を始業式の2日後に

 東京都の公立小学校では、3月25日に卒業式を行う学校が多い。従って、翌日から29日の金曜日までの4日間が年度末処理の期間ということになる。異動者との別れを惜しんでいる余裕もない。そして、2024年度の始業式・入学式は4月8日の月曜日だ。実質5日間で新年度と入学式の準備を行うことになる。始業式では、子どもたちとの新たな出会いをそこそこに、新入生を迎えることになる。慌ただしい1日だ。そして、次の日から全学年がそろった学校が動き出す。中学校では、始業式の翌日に入学式を行っているが、1日しか余裕はない。新規採用教員は、よく分からないうちに担任として子どもたちの前に立つことになる。

 墨田区教育委員会は、来年度の小・中学校の入学式を始業式の2日後に実施することを決めた。長期休業日や入学式、始業式などの日程は管理運営規則によって規定されるので、学校では変えられない。余裕をもって学級開きを行うことができることに加え、新入生を迎える体制を整えることができる。この画期的な判断が各地に波及することを期待したい。

全ての学年でスタートカリキュラムが必要

 小学1年生は、幼児教育から小学校教育への段差をなくしスムーズな適応を図るためにスタートカリキュラムが用意されている。そのため、授業週数は他学年より1週少ない34週以上と設定されている。2年生以上の学年にも、教職員にもスタートカリキュラムが必要ではないだろうか。

 クラス替えや担任が変わった学級では、クラスを作っていく過程と時間を大切にしたい。どんなクラスにしていきたいか、そのために何をするか、じっくり考え、話し合っていく。これまで、その時間が短過ぎ、見切りスタートだったことは否めない。授業でもいきなり教科書を開くのではなく、前学年からのつながりや学び方の確認を丁寧に行っておきたい。1人1台端末の活用方法についても再度確認しておことが必要だ。 

 新年度、いきなりスタートダッシュを切るので、5月の大型連休の頃に子どもたちも教職員も疲れが出てしまう。事実、若手教員が不調を感じるのもこの頃が多い。第1週目は、全て午前授業にするなどして時間的余裕をもたせ、学校運営体制を整えていきたい。新任教員や異動教員にとっても、新しい学校の校務運営の仕組みを理解する時間が必要だ。年度当初の共通理解が十分でないことが、後になって共通実践が行われないという問題につながっている。

授業時数35週基準の呪縛

 ここで問題となるのが授業時数だ。各教科等の授業は、年間35週以上にわたって行うことが学習指導要領に定められている。4年生以上の1015時間を35週で割ると週29コマになる。1989年の学習指導要領までは、全ての教科等の標準授業時数は35の倍数になっていたことから、学校は35という数字に呪縛がある。同じく学習指導要領には「週当たりの授業時数が児童の加重負担にならないようにするものとする」とあり、大きな矛盾が見えてくる。ただ、実際には40週以上の授業を行っているはずだ。40週で割れば、25.4時間となる。1週目をスタートカリキュラムに充てても、標準授業時数は確保でき、スロースタートは可能だ。

学校行事のダウンサイジングを

 標準時数を大きく超えた教育課程編成は是正すべきとの文部科学省の通知により、不測の事態に備えた時数の確保は最低限になった。問題は特別活動である。給食指導を除く学級活動の時間数(35時間)以外に規定はなく、学校が適切な授業時数を充てることになっている。児童会活動やクラブ活動は、ねらいを達成するための時間数は想定できる。学校行事については、内容の精選はもとより、その準備の時間をいかに短縮するかが課題となる。これまでと同じ内容で準備時間を短縮すれば、質の低下につながるのではないかという危惧を抱く。しかし、学校行事自体をダウンサイジングすれば、子どもたちや教員が関わる密度が高くなる。体裁を意識した見せる学校行事から、子どもたち自身が自分の姿を見せる学校行事に変えていきたい。

 

広 告
広 告