教員への残業代支給と持ちコマの上限設定を 18万人の署名提出

教員への残業代支給と持ちコマの上限設定を 18万人の署名提出
文科省職員(右)に署名を提出する愛知工業大の中嶋教授=撮影:大久保昂
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 教員の長時間労働解消の必要性を訴えている有志の研究者たちが2月15日、文部科学省を訪れ、公立学校教員への残業代の支給や教職員の増員などを求める18万2226人分の署名を提出した。その後の記者会見では、残業代を支給しないと規定している給特法の廃止などを求めるとともに、義務標準法を改正して教員の受け持ち授業数(持ちコマ数)に上限を設けるべきだと訴えた。

 署名を提出したのは、20人の教育研究者が呼び掛け人となって結成された「教員の長時間勤務解消を求める会」。①教員にも残業代を支給する②学校の業務量に見合った教職員を配置する③この2つを実現するために教育予算を増額する――という3つの政策の実現を求め、昨年5月からインターネットなどで賛同者を募ってきた。この日は愛知工業大の中嶋哲彦教授らが文科省を訪れ、同省財務課の職員に集まった署名を手渡した。

記者会見する研究者たち=撮影:大久保昂
記者会見する研究者たち=撮影:大久保昂

 その後の記者会見では、筑波大の浜田博文教授が、教員の置かれている現状について「授業や生徒指導、打ち合わせ、緊急的な対応で所定の勤務時間が終わってしまい、授業準備や振り返りが後回しになっている」と指摘。こうした事態の解決策として、教職員定数の計算方法を定めている義務標準法にメスを入れ、公立校教員の1週間の持ちコマ数の上限を小学校で17コマ、中学校で15コマに設定し、授業準備などに充てる時間を確保できるようにすることを提案した。浜田教授は「今の学校は多種多様な子どもたちをクラスに抱えている。十分に自信を持って授業を行うには、従来以上に準備や子どもを理解するための時間が必要だ」と訴えた。

 一方、中嶋教授は「勤務時間制限のメカニズムが組み込まれた勤務時間管理制度がなければ、教員はいつまでたっても長時間勤務に従事しなければならない」と述べ、残業代による勤務時間抑制のインセンティブが働きづらい現行の給特法を改めるべきだとした。また、学校の業務量が増えても、教員が増えない仕組みとなっている義務標準法の教職員定数の計算方法を問題視し、浜田教授と同様に持ちコマ数の上限設定の必要性を唱えた。

 教員の負担軽減や処遇改善については、中教審の特別部会で議論が進められている。14日の会合では、給特法を含めた処遇の在り方が議題となり、委員からは同法の維持を前提とした意見が相次いだ。

 これに対し、東京大の小玉重夫教授は「義務標準法と給特法は昭和の時代に作られた法律であり、既に無理が来ている。中教審はそこに踏み込めていない」と批判。「2つの法律を抜本的に変えることによって、公共財としての学校を再生させていくことが重要だ」と述べた。

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