中教審は2月20日、初等中等教育分科会教員養成部会を開き、前回までに引き続き、教員になった場合に日本学生支援機構の貸与型奨学金の返還を支援する制度をどう設計するかについて議論した。教員不足が深刻化する中、教員を目指す人を増やす「量」の観点と、教員の資質・能力を高める「質」の観点の両面から対象者の範囲を検討していく方向でおおむね一致した。また、現行の奨学金制度の枠組みで導入できる返還支援策の具体化に速やかに着手すべきとの方向性も打ち出した。
文部科学省は部会の冒頭、前回までの議論を踏まえ、「量」と「質」の両方を追求していくことが必要との論点整理案を提示した。また、大学院で優れた業績を収めた場合の返還免除など、現行の奨学金制度の枠組みで導入できる取り組みの具体化を進めつつ、それに上乗せする支援策を並行して検討していくことが重要との考え方も示した。
会合では、多くの委員が論点整理案に賛同した。木村国広委員(長崎大教授)は「優先されるべきものの一つは、資質能力ある志願者の確保。それと合わせて教職の高度化も必要だ」との見解を示した。真島聖子委員(愛知教育大学長補佐)も「質も大事だし、量も大事」と述べた。
一方、前回までと同じように、「量」と「質」のどちらを優先していくかについては、委員間で意見が分かれた。
松田悠介委員(認定NPO法人Teach For Japan創業者・理事)は「質と量の両方を追求するのか。優先順位を付けるべきではないか」と問題提起した。その上で、「成り手が増えれば、自然と質も上がってくる」として「量」を優先すべきだとの見解を示した。
これに対し、森田真樹委員(立命館大大学院教授)は「返還免除が量の拡大に決定的に重要になってくるかというと、なかなか難しい」と指摘。「大学院を中心に質の高度化ということを前面に出した制度設計が必要ではないか」と述べた。
また、教職の魅力を高めるには、奨学金の返還支援だけでなく、教員の負担軽減なども含めた総合的な取り組みが必要との意見も相次いだ。戸ヶ﨑勤委員(埼玉県戸田市教育長)は「学校の働き方改革、処遇改善、指導運営体制の充実とセットで推進していくことが重要」と指摘。森山賢一委員(玉川大大学院教授)も「働き方改革や処遇改善と一緒に進むことに意味がある。(奨学金の返還支援で)教職希望が大幅に増えるというより、相乗的な意味での支援だと思う」と主張した。