東京都世田谷区教育委員会が、インターネットのフィルタリングソフトの機能を活用して小中学生のGIGAスクール端末上の検索履歴などを把握し、子どもの支援につなげる取り組みを始めようとしたところ、区議会から懸念の声が上がり、撤回を余儀なくされていたことが2月27日、区教委への取材で判明した。こうした取り組みは他の自治体でも進められているが、子どもの内心に踏み込む側面もあり、理解を得る上でハードルが存在することが改めて浮き彫りとなった。
盛山正仁文科相は同日の閣議後記者会見で、「さまざまなデータを活用し、きめ細かな指導や支援に生かすこと自体は重要」との認識を示した上で、今回の一件については「保護者の十分な理解を得ながら取り組みを進めることが肝要であり、一律の解はない」と述べるにとどめた。
世田谷区教委は今年度、一部の区立小中学校のGIGAスクール端末にフィルタリングソフトを導入し、①有害サイトへのアクセスを遮断し、調べ学習に使いやすくする②子どもたちが乱暴な言葉を端末に入力した場合に警告を発する③子どもたちの検索履歴を把握し、必要な場合は支援につなげる――という3つの取り組みを試験的に進めようとした。ところが、昨年6月に区議会文教常任委員会でこの方針を説明したところ、一部の区議から「子どもの内心に関わる問題なので慎重に対応すべき」との声が上がり、②と③については取りやめることにした。①については、2学期から実施している。
区教委教育研究・ICT推進課は、検索履歴を把握する試みについて、「他の自治体でも活用例があると聞いており、試験的にやってみようと考えた」と説明。世論の動向などを見極めながら、引き続き検討していくとしている。
文部科学省によると、全国の自治体の中には、保護者の理解を得た上で、子どもたちが「自殺」や「リストカット」といった要注意ワードを端末に入力した際には学校の管理職に知らせる仕組みを導入し、早期対応につなげている例が既にあるという。