新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、対人関係が希薄になり、人と出会う機会が少なくなった。しかし一方では、SNSで大人と知り合いになった子供が、何らかの被害を受ける事件を目にする。その時、その子供たちは、どんな毎日を送っていたのか、友達や親には話をしたのか、といろいろと想像してしまう。
人と人との関係は、自然に身に付くものと私は思っていた。でも今は、人間関係のつくり方は「学ぶ」ものになっていると思う。その意味では、SNSで知り合う関係は、「学ぶ」というより、人工的につくられた関係といってもよいのかもしれない。
これからの社会では、多様性が大切にされ、互いを尊重し、対等な人間関係を結ぶことが求められていく。子供の会話力、読解力の低下が話題となり、ただ文章を理解するだけでなく、根拠として文章を活用することが重要になってきた。読解力は、互いの考えを理解し合うという点で、人間関係を結ぶことにもつながるものといえる。
1人1台端末の学習スタイルが定着し、ICT環境はますます校内に整えられていく。しかし、大事にしたいことは、顔を付き合わせて対話すること、相手とせめぎ合い、折り合う体験やそのための知恵を探ることである。
学校は、子供が人と人との関係を「学ぶ」体験ができる場所ではなかったかと改めて思う。これからの学校の存在意義は何だろう考えさせられる今日この頃である。
(鵜飼克博・名古屋市立本郷小学校長)