中教審の教員養成部会は3月19日、教職大学院を修了して教員になった人の大学院段階の奨学金について、2025年度の採用者から返済を免除すべきとする審議まとめ案を了承した。教職大学院以外の大学院で学んで教員になった場合も、学校現場での実習などのカリキュラムがある大学院であれば、返還免除の対象とすべきだとしている。全国的に教員志願者が減少傾向にある中、奨学金の返済を免除することで教員になるインセンティブを高めつつ、大学院レベルの知識や技能を身に付けた質の高い教員を増やす狙いがある。
部会が示した案は、日本学生支援機構の貸与型奨学金のうち、大学院進学のために借りた無利子の奨学金(第一種奨学金)の返済を免除しようというもの。対象は新たに正規教員として採用された人に限定し、現職教員が教職大学院などで学ぶケースなどには適用されない。一方、公立校だけでなく、私立校や国立校の教員になる人も対象とする方向だ。
大学院修了者を対象とする理由としては、新たに教員となる人に占める大学院修了者の割合が低下していることに加え、大学院段階の奨学金の返済免除であれば、現行の第一種奨学金の返済ルールの範囲内で速やかに対応できることを挙げている。学部卒で教員になった人も返済免除に加えるかどうかも焦点となっていたが、法改正を含めた大掛かりな手続きが必要となることから、今回の案では「引き続き検討を進めていく」とするにとどめた。
19日の部会では、こうした方向性に対して大きな異論はなかった一方で、さらなる支援の必要性を求める声も上がった。
戸ヶ﨑勤委員(埼玉県戸田市教育長)は「学部段階の奨学金の返還免除も含め、幅広い支援の充実に向けた検討を引き続きお願いしたい」と要望した。松木健一委員(福井大副学長)は「現職の先生が働きながら学べるような制度改正もお願いしたい」と述べた。白水始委員(国立教育政策研究所初等中等教育研究部総括研究官)からは「今回の取り組みの成果をモニタリングしていくことが必要だ」との意見が出た。
日本学生支援機構の前身である旧日本育英会の貸与型奨学金には、教員になった場合に返済が免除される制度があったが、他の職業との公平性などの観点から廃止された経緯がある。しかし、産休や育休を取得した教員の代役が見つからない「教員不足」が深刻化していることなどを受け、自民党や公明党から「復活」を求める声が上がっており、中教審の教員養成部会が昨年12月から具体的な制度案について議論してきた。